「R教授インタビュー」
アングラ系雑誌の編集に携わる様になって10数年、
私には機会があればインタビューしてみたいと思っていた人物がいた。
世間からは忌み嫌われ、学者としても完全に孤立した位置にいる。
でも、いつでも一貫した立場で揺らぐ事なく、時代や世相に迎合しない人物。
“レイプ教授”と呼ばれるその人がそれだ。
レイプ研究の第一人者と言われ、また自身も作家として官能作品を発表している。
有名な著書には“伝説のレイプ10選”や、
小説の“官能女教師 午後の開脚授業”などがある。
その人の名前は“知 悦人(しり えつと)”
あちらこちらで偏見差別者の代表のような役割で意見を求められる人だ。
彼自身がいつも繰り返しているが、彼はレイプを肯定しているわけではない。
そもそもそれを違う次元・場所に見て話をしている人なのだが・・・
知人の出版記念パーティーで偶然御一緒する事ができ、
同じテーブルで意気投合できた成果なのか、別室での簡単なインタビューにOKが出た。
まぁ、軽い世間話の延長のようなノリで御受け頂いたのだが。
偏屈なようでいてシャイで、横目で話を聞きながら少年の様に笑ってみせたり・・・
思っていたよりもずっと話しやすい人物だった。
突然だったし、準備してきた訳でもない。
先生のペースで話してもらい、私はただ聞き役に徹する方法でそれに臨んだ。
(知)
「物好きですね、こんな楽しい場所で私の話を聞きたいなんて・・・
それも官能作品や出版物の事じゃなくて、レイプについての考え方?!
私が世間から散々な物言いをされている事は御存知でしょ?
いつも繰り返してるけど、誰もレイプが合法だとか推進とかの立場じゃない。
今日もそこから繰り返す?(笑)
私は相槌と最低限の単語を使って先生から言葉を引き出す事に徹した。
「レイプの勘違い? と言うか、一般的な扱われ方のどこに違和感を?」
私は尋ねた。
(知)
「う~ん・・・ 例えば、この世の中から殺人・窃盗、そしてレイプが消えた事はない。
これらは誰もが被害者となりたくない、そんな視点に立って否定されるものたち。
しかしどれも、そこに加害者がいて、その加害者なりの思想や理由が存在する。
本人に自覚がなく、または薄く、自らの意志でないと判断されるものもありますが・・・
でも、大半はそれなりの、世間的には全否定される代物ですが、確かに理由がある。
まぁ、殺人・窃盗・レイプ、どれも自分や身内が巻き込まれたら困るんだけど、
つまりそこの位置に立った視線で見た物事の考え方でもある。当たり前ではあるんだけど。
よく世間でもこんな質問を見掛けますよね?
“なぜ人を殺してはいけないのか?”とか“なぜ物を盗んではいけないのか?”とか。
要は、“なぜレイプしてはいけないのか?”にも繋がる部分だけど・・・
どう思います?」
私は当たり前の一般論しか言えず、自分がつまらなくも思った。
(知)
「そんなもんですよ、誰でも。つまり、それはあなたが人間らしい事でもある。
人個人ってのはそれぞれ欲望・欲求と無縁ではいられない。
でも、どんな場面でも自分が思う様に欲しい物を手に入れられるわけではないし、
慢性的敗者にはなりたくない。そして何より、自分、そして自分に大切な者の、
その生命や財産を守りたいわけです。自分だけが圧倒的に強ければ、
きっと何もかも独り占めしたいでしょうし、それこそが理想に対して最短です。
だからこそ、勝ち続け・守り続ける事が出来ないが故に分配と協力を受け入れ、
それを法律とかモラルとか、まぁ特別に力あるもののようにするわけですが・・・
でもね・・・
本当は・・・ だからこそ、その法律もモラルも一番違和感を感じているのは自分自身。
だって、自分の伴侶を奪われたくないけど、チャンスがあれば他人の女は欲しいもの。
それがレイプかどうか(合意・受け入れ・納得があるかどうか)なんて関係ない。
自分の気持ち・欲求とは、“その異性を抱きたい”でしかない。
むしろ、それを実行した時に受ける罰ってのは、躾・仕置きでしかなく、
一個人の思想においては納得していないものだと思う。違う?」
さすがに少し強引な流れだったので、
「そうは言っても、それでレイプに対する意味合いが変わりますか?」
私は少し挑戦的な物言いになってしまった。
(知)
「(笑) 無理もない無理もない。あなたの反応、世間の大方はそんなもんです。
少し違う角度から説明させてもらおうかな。
リアリティーがないと伝わりにくいって言うか、イメージできないだろうし・・・
例えばお聞きしたいんだけど、あなたもマスターベーションの経験はあると思うんだけど、
対象にした女性はエロ本やAVからだけ利用した? どう?!」
私は返事に困っていた・・・
(知)
「すみません(笑)、別に具体的な話が欲しかったわけじゃなくて、最良の例え、
そこを狙ったわけなんです。
その事で説明したかったのは、あなたが性における職業女性だけを対象にしたのか?
言いたい事は、同級生の女性・学校の先生・他人の人妻他、
そんな他人の一般女性、それも同意なしに服を脱がせ、さらに抱いたりしなかったか?
そこが聞きたかったんですよ。まぁ、それはむしろ普通の事なんだけど(笑)
例えば“視姦”という言葉が使われる事がありますが、想像の世界とは言え、
あなたはその女性の同意なしに猥褻行為を行っているわけです。脱がし犯し・・・
誰もあなたを罪に問わないと思うけど。
頭の中で人を殺しても物を盗んでも同じかな。法律で裁かれる事はない。
でも、それ自体がモラル他、本当にいけない事って言うのが正当なら、それも罪でしょ?!
誰もが、いつのまにか都合よく自分に都合のいい解釈・優先順位にすり替えてるわけです。
その事が“生きる為”と言われれば否定など出来ませんが、ならば、
“レイプそのもの”の本質もやはり無視するべきではない。私はそう考えるんです」
先生は真正面を向く様になったし、言葉にも熱が入って来た事が伝わる。
(知)
「人間、それも現代人、そして先端文化に生きる者は特に分かり辛いし難しい。
でも、それは本質が消える事でも無視されるべき事でもないと考えています。
生きる事が難しくない世界にいるからこそ、そこに自殺という価値が見い出される。
隣に異性がいる事が日常化し、それに緊張感を無くしてしまった時、
“NTR”という刺激がとても有効に働く事になる。
その異性が美しいかどうかでなく、“他人の物(所有物)”である事に価値を感じる。
あなたのパートナーを奪いたくなるし、自分のパートナーが奪われる刺激も存在する。
どれも人間の環境と本質そのものであり、そこから逃げる事は出来ない。
殺人や窃盗とレイプが同列でない部分の一つは、レイプが欲求による部分が大きい事。
快楽殺人もあれば欲求に起因した窃盗行為も存在はしている。だが、それは少数。
レイプはむしろ本人の直接欲求そのものと思える。
違法であるとか“許せない”であるとかの前に、既にそれぞれの中で行われている事。
それが想像レベルであり、大方は“視姦止まり”なので問題にならないが・・・」
「先生、確かに御説明の所々での同意はあるのですが、どうしても違和感が・・・
加害者にしたって自分が被害者にはなりたくないわけですし、自己防衛としても、
やはり他人に害を及ぼす事には正当性がないですよね?」
先生を前にして、またしても当たり前過ぎる文言で切り返してしまった。
(知)
「人は理想どおりとか、完全に正しくなど生きられないですよねぇ?!
正しくと思いながらも誤り、誤った道に行きながらも正しい道をどこかに意識していたり。
そのどちら側を歩くか、または行ったり来たりする中でどう思い、どう発言するのか。
人はレイプを否定できません。断言します。
なぜなら、レイプを否定する事は自身の存在をも否定するものになるからです。
繰り返しますよ、誰もレイプを推進するわけでも合法と言うつもりもありません。
ただ、もっと人間としての視点を持ってレイプを見る事が出来ないのか?
私はそう思っているんです。
なぜレイプの否定が自身の存在否定になるのか、それを説明しましょう。
人は遡れば何代・何十代・何百代・何千代・・・
どこまでも長く永遠の上にその存在を置いています。これは誰も同じです。
人類が一つ一つの積み重ねで生命を繋げて来た歴史の中、
そこにレイプが一回も存在しないのか、そこには正しい愛だけだったのか?
そして人殺しも窃盗も関わらないものなのか?
自分に見える短い景色だけを見たなら、おそらくきれい事だけで済むでしょう。
しかし誰も、自分が正しい系統だけで存在しているなんて事はあり得ない。
もしそれがあると思っているのなら、それこそがエゴであり自己中心そのものだ・・・」
話し始めた頃の先生とは別人の様で、何かが乗り移ったかのように激しく話す。
でも、不思議と端々に私の価値観を変えるような何かが散らばっていて・・・
(知)
「生物の基本中の基本、まず自分の生命を守ること。しかし・・・
実はこの次こそが最大の問題と思っているんです。
近代個人主義の世の中は特に、自身の命の確保の次に持って来てしまうのが、
“個々人の権利”とか、まぁその類の事。
でも、本当は2番目に来るべきものはそれではない。それは、
“命の伝達”であり、子孫繁栄とか生物としての繁殖こそが大切。
誰しも人格・人権以前に、先祖が繋げたその生命によってここに存在するものであり、
まず自分の命を適齢期まで守り抜いた先祖の交配行為によって我々が存在する事。
また、その交配行為には残念ながら遠い昔には善・悪での考えが乏しかったであろう事。
相手が拒否するかどうかではなく、種の将来を確保する為に本能的に行わられただけの、
それ以上でもそれ以下でもない、生物そのものの意味を人でも超えるものではない。
私はそんな風に思っているんです。
今のこの日本において子孫繁栄をレイプでとは思っていません。
でも、誰の存在にもそれが無縁ではなかった事はしっかり受け止めるべき事柄でしょう。
それにもう一つ、こんな例えはどうでしょう?」
私は先生のペースに飲み込まれているのかもしれない・・・
先生が提示する例えの一つ一つが正しい事のように自分の中に入って来る恐怖を感じた。
(知)
「生物の世界では常に劣等種の淘汰が行われてきました。
きっと人も特別ではないでしょう。
男性として魅力がない男性、そして女性として魅力がない女性は子孫繁栄には不利です。
でも常にそうですが、マクロ的視点で悪に振り分けられる事柄であっても、
それがミクロ的視点でも悪となるとは限らないのです。
魅力どころか、問題・欠点を抱えてしまった種は相手に拒否されます。
まぁ、拒否する側にとっては当然で、より優秀な子孫を残したい本能ですから・・・
でも、自分が劣等側にあったとしたら?
劣等側にも子孫を残そうとする本能があり、それは険しいものになるでしょう。
劣等がある意味で個性であったとして、その個性が現在も存在している理由の一つに、
それは先人たちのレイプの歴史も大きく影響しているはずです。
もっと言えば、そのレイプの歴史こそが生物の、そして雄雌の生命力の源にも思えます。
(笑)
なかなかこんな話をしても理解して頂けるものではありませんからね・・・
人はされる側(被害者)を避ける為に納得のないままに共益を受け入れる。
しかし当事者としての自己は捨てられず、いつでも加害者としての欲を抱えている。
いつでもその達成を企んでいる。
レイプなんてしちゃいけませんよ!(笑)
あなたは現代人でも公共人でもなくなってしまうから。でも・・・
自分の中にある本能が大きく、それがどうにも抑えられなくなったなら、
その時は野蛮と言われようとも罪に問われようとも罰を受けようとも、
一人の人間として自己の達成に正直になった時なのでしょう。それは否定できない」
こんな話を聞いている事が少し恐ろしくなった・・・
自分は普通にレイプに巨悪を感じていたし、レイプからは“愚か”だけを感じていた。
しかし先生の話のどれに屈服したわけではないと思いながら、
それなのに先生の話を聞く前までの自分とは違う自分が存在している。
“レイプ”という言葉の何かが違っている。
自分の周りにいる人間がレイプされるなんて考えたくないし、許せない。
しかし自分も周りの女性たちを視姦して来た事実がある。
担任の女教師を犯し、彼女の友達も犯している。そう、モラルまで壊している。
それが頭の中の事だからと、私は正当な人間として社会の中に生きている。
だけど、レイプ犯のその行為や卑劣さが許せないまでも、自分の祖先の事、
そして自分の存在自体がその上に成り立っている可能性など考えた事がなかった。
先生の言うとおり、自分の命の次に大切なのは人権ではなく子孫繁栄なのかもしれない。
人が歴史の中で繋がっているそのものだ。言い訳なく自分の存在そのもの。
ただの異端児であり変わり者の作家ぐらいに思っていた知 悦人氏。
彼の小説のどこかに書かれていた言葉遊び・・・
“レイプは犯罪です。でも、芸術です”
ふざけた事を書く人間としか思っていなかった自分が小さく見えた。
先生は最後まで笑顔で、そして終わりには冗談を連発して場を和ませた。
きっと強めの表現と極端なストーリー展開で私を引き込んだのだろう・・・
でも、先生の官能作品がただのシュチュエーションエロス系小説だと思っていた自分。
まったく読む気がなかった私が、今、先生の作品を読んでみたくなった。
“レイプに愛”なんて馬鹿げた言葉。
でも、今は少し・・・
自分が怖くなっていた。
最後までお読み頂きありがとうございます!
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テーマ : 読み切り短編官能小説(リアル系)
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