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「深川ツキ師八代目」





幸太郎はさえない大学生。数人の、これまた地味な友達とゲーム話をしているか、
あとはアニメ話、そしてUEN43とか言問橋31とかシロももとか、アイドルの話。
少しやせ型ニキビ顔、そして小さめの細い黒縁メガネ。本当にさえない。
私鉄線のオシャレな駅に近いキャンパスと深川にある自宅の往復の日々だ。
幸太郎の自宅。黒光りした廊下・階段、今では珍しい木枠のサッシも健在の家。
早くに父親を亡くし、祖父・祖母を含む5人家族で生活している。
貧乏なわけでなく、その敷地には大木も植わる“塀の長い屋敷”
そんな家に3世代で同居する一人息子が幸太郎。
それでも本人は、本当に普通過ぎてつまらない男。でも・・・
“二十歳”それが比類なレベルで特別である事、実は本人すら知らなかった。


実は幸太郎は物心ついてから、自分の家がどんな家業なのかを知らないまま育った。
聞いていなかったのか・しっかり聞く機会を逃していたのか、知らないままだった。
生活に困る事なく祖父・祖母・母と暮らしているし、家族にも自分にも興味は乏しい。
だから、出て来る料理を食べ母が買ってくる服を着、出掛けて行って帰って来るだけ。
それに特別疑問を持つ事もなく、そのまま大きくなって来た人物。
でも、慎重に思い起こせば本人にも不思議な事は多かったはずだ。
まず近所では友達が出来ない。仲良くなったと思うと、
“ごめん、幸太郎とは付き合えないや・・・”と一方的に消えて行く。
また、町内会や学校の行事で大人たちの中に入っても、
自分の母親がそこに現れれば、蜘蛛の巣を散らすように大人たちはそこから消える。
普通なら“なぜ?”となるところだろうが、良くも悪くも、もしや運命の直感なのか、
幸太郎はその理由を大人たちに問い詰める事は無かった。
“いずれにせよ良い事ではない”と悟っていたならなお更、家族にも聞かない事もわかる。
今、そんな長く続いた時間が終わりの時を迎えようとしていた。
20歳、その誕生日、幸太郎は祖父の部屋に呼ばれた。
祖母も母も、口を開かないまま外へ出掛けていった。その表情は特別で・・・

約一時間、祖父の話を聞いた幸太郎は虚ろな表情で祖父の部屋から出て行った。
いつもは表情の無い祖父も、自分の部屋から幸太郎を送り出す時のその表情だけは、
自分の孫に申し訳ない、またはその運命に遣り切れなさを感じて憂い、
それでも、それを伝えなければならない覚悟の様なものが感じられる表情をしていた。
自分の部屋に居つくタイプの幸太郎が、珍しく外へ出掛けて行った。
どうにもならないものを抱えた時、その場所から逃げたくなるものも無理はない。
それほどに特異で、普通には受け止めようのない事柄だったのだから・・・


幸太郎はいったい何なのか、何者なのか?
それは、彼は“ツキ師”の八代目と言うことだ。
“ツキ師”・・・  きっと耳慣れない言葉だろう。意味合いを含めて書けば“突き師”
ほんの一部でビリヤードの職業プレイヤーをそう呼ぶ人もいるが、それとは違う。
むしろこちらは江戸時代以前からの歴史を持つ職業だ。裏方稼業ではあるが・・・
幸太郎名前には屋号の様なものがあり、“深川西方”が冠につく。
つまり、“深川(西方)ツキ師八代目・幸太郎”という事になる。
西方は深川地区でも大川側(今の墨田川側)という意味合いだ。
江戸時代末期から明治にかけてツキ師稼業は盛況で、全国の都市に多く存在した。
特に黄金期に一番中心で華やいでいたのが、“浅草ツキ師”と“深川ツキ師”
当時は浅草こそが日本の中心的歓楽街だが、“数の浅草・技の深川”と言われた。
浅草は仕事数が多く、その仕事数や人数では日本一。
しかし、それよりは劣るものの、その技では深川が日本一とされた。特に西方。
では、“ツキ師”とはなんなのか?

今の言葉で言ったなら・・・
“女性とセックスをしてあげる職業”という事になるのだろう。
だからこそ、その一番大切な意味合い(真実)が今の時代には伝わらない。
如何わしい稼業や職業は今でも簡単に名前が理解される。皆、その手の情報共有は早い。
しかし“ツキ師”は聞かないはずだ。その意味を理解出来れば本質が見えて来る。
それは本当に限られた域のレベルに達した者だけが生きて行ける世界であり、
それを受ける側も、立場・事情を含めて特別な何かだったりする。
だからこそその存在はベールに包まれ、何よりその言葉さえ知る者がいない。
ツキ師=風俗業と解釈してしまうと、本質を見誤る。
その時代のツキ師の仕事書きはこんなものだ。
初物の開帳、遊女のおろし、嫁入り躾、後家の世話、華族の遊びなど・・・
後になるほど現在で言うところの出張ホスト的な解釈になりそうだが、それは違う。
まず、初物の開帳・遊女のおろし・嫁入り躾の三つは意味合いでは重なるものだ。
分かり易く、要はその女性に性的な事を教えると言うことになる。
初物の開帳は、“処女では困る・未経験では困る”そんな声に応えるもの。
遊女のおろしはまさに、女が遊郭で働く前(むしろ現場に出る前)などに教える事。
そして嫁入り躾は、その女が嫁入りした先で基本的な性生活が行える様に教えるもの。

後家の世話・華族の遊びは確かに今に通じる部分もある。
つまり、夫に先立たれた御夫人の慰め、または今で言うセレブ夫人のお楽しみのわけで、
こちらは“遊び相手(セックス遊び)”と取られて仕方ない。
でも、そのまま現在の出張ホストと一緒に考えてはいささか・・・
その説明の前に、そんなツキ師の中にも格式という物がある事もここで言いたい。
浅草・深川のツキ師、それも“花形”がついて言われるツキ師連中は特別に格式が高い。
名家・財閥・旧貴族、そして時代を動かしている様な人物など、
そんな格式高い家から依頼を受けるような、それは貴い稼業でもあった。
どんな職業でも下の方にいる連中が、その職業のイメージを落とすものだが、
幸太郎の先祖は、ほんの一部、選ばれた人間・認められた人間だけがいた場所にいた。

そう、現在の女性相手に体で稼ぐ事を商売にしている男性との違い、それは・・・
まず、当時は雑誌もビデオも無かった。何も情報がない。あっても真実の確認は出来ない。
それはツキ師の側も依頼する側も同じ事。だから、そこには大きな信頼関係が必要だった。
そして避妊具がない。
コンドームがない時代に、ツキ師が相手を妊娠させない事は勿論だが、
自分自身が性病にかからないことは何より大事だった。
まだまだ性病が恐ろしい時代だし、一度そんな噂が広がればもう信用のある仕事はない。
でも、本当の意味で一番違うのは、それは“稼業”が“家業”であって、
家族の理解無くして成り立たないものである事が一番大きいと思う。
プロを名乗るホストも男優も、家族(父・母・嫁)が仕事を受けて来ることは無いだろう。
そこが一番違う。
ツキ師は受ける側も、それを依頼する側も家族なのだ。だから貴い仕事なのだ。

ツキ師が仕事を評価され自分を守る方法は、その底知れぬ見極めの能力だけだ。
指使いが上手くても良いペニスを持っていても、病気にかかれば終わり。
浅草や深川で活躍した花形ツキ師はそのレベルが高かった。
“長く活躍する事・出来る事”こそが他に代えがたい価値でもある。
特に有名だった深川(西方)の四代目・信太郎、はその技で10年活躍したと言われる。
その時代に10年だ。もちろん少しの誇張はあるだろうが、いずれにしてもそれほどの人。
幸太郎の先祖には“ツキ師の鏡”と言われる、その信太郎がいるのだ。
幸太郎の祖父はその全盛期を知らないまでも、まだその伝説が薄れない時代に生きた人。
自身も深川を代表するツキ師だった。
もう時代は“ツキ師”を多く必要とはしなくなっていたが・・・
そしてとどめを刺すかのようにその息子、幸太郎の父は拝命直後に亡くなった。


幸太郎はその事実を知らされた。誰でも、にわかに信じがたいその話を。
でも、その事は今までの自分が受けた周りからの扱い、そして家族の生き方、
一つ一つが上手く繋がってしまう。
自分の持っていたただの紙切れ、でも、それにピタリと合うそれが出て来た瞬間に、
その奇跡は一つになる。
亡くなった自分の父が七代目で、祖父が六代目、そして歴史上に伝説の四代目がいる。
昨日までの自分と何一つ変わるわけもないのに、でも別人になっている自分がいる。
“ツキ師”
知らなかった言葉を知ったその時には、それが自分には途轍もなく大きな言葉になって・・・
“ツキ師の息子” “ツキ師の家系” “ツキ師稼業” ・・・・・・・
祖父から一時間の間にどれだけ聞いたことか。そう、その血は流れている。

数日間、幸太郎は放心状態のまま漂っていた。
家族も覚悟していたのか、そっと黙って幸太郎を見守っていた。
受け入れるでも反抗するわけでもなく、何も言わない日々は続いて。
もう一週間になろうという時、祖父の部屋に座る幸太郎がいた。
どっちが何を言ったのか・どう言ったのか、二人以外は知らぬところ。
でもその時から、そう、幸太郎の修行は始まった。


こんな時代に“ツキ師”なんて・・・
それはずっとその内側にいた家族のそれぞれも頭の中に抱え続けて来たことだ。
でも彼らはずっとそれを受け止めて生きて来た。そして守って来た。
先代(父)で一時的に途切れた事で、深川のツキ師は誰も仕事をしていないが、実は、
浅草に二人、京都と大阪に一人ずつ、まだツキ師は残っている。
その事を知っているのは数少なくなった、現存するツキ師の家族だけ。
元々ツキ師は大都市にしかいないが、もう辞めて郊外や田舎に越した者も多い。
そんな、今でもツキ師に誇りを持っているツキ師本人(隠居した)が連絡網を持ち、
細く途切れそうな糸を繋いでいる。もう全国で十数家族しか確認できない。
ツキ師本人が亡くなれば、それを機会に彼らの家族は“ツキ師の家族”を封印する。
だから、四代目信太郎の子孫にして、今でも元ツキ師の祖父が健在である幸太郎は奇跡だ。
奇跡の子でもある。
現在でもツキ師が残っている事を不思議に思うかもしれないが、不思議ではない。
この手の事は意外によくある事だ。歴史はそれほど変わらない。
その意味は、名家があれば女中や仕え人がいるものだ。そして御用達も。
そんな限られた特別な人間たちの中を取り持つのは家系を重視した長老の絆だ。
信用のない者は入れない。しかし、たとえ身分が低くても信用があれば別だ。
それどころか、同等に扱われたり、または、尊敬や感謝を受ける事も少なくない。

そう、ツキ師が今も存在するその裏側には、しっかりと“使う側の伝統”も存在している。
大切に大切に育てられた箱入り娘を、いきなり未知な(能力の)男に託せない。
信じられないだろうが、名家のお嬢様、
特に旧貴族系で今でも伝統と格式を大切にしている家柄の人々は、ツキ師を利用している。
それが理解できない事も当然で、一般庶民にはそんな女性と触れ合う機会などないから。
銀行も百貨店もこちらから行くものではない、向こうから来るものだ。
セックス(性の知識)をネットやテレビ、そしてその影響で洗脳された劣性の男。
そんな男から学ぶこと=ただ身を汚すだけの快楽行為なのだ。
女を受け入れる側の男性もまた、穢れ無き男性でなければいけない。
だからこそ、そんな世間からみれば計り知れない者同士が重なり合うための御用聞き、
そんな役割が、そんな価値観の上に成り立つ。
“セックスが好き”な男性は多いだろう。きっと溢れている。
“性知識を学ぶ者”はどれほどいるだろう。でも、教養も興味も含め、そこそこはいる。
“訓練を受ける者”はどれほどいるだろう?  あなたのまわりにおられます?!
それもいるかもしれませんね、男優さんやレベルの高い風俗業の男性でも。
でも、その教材にネットもビデオも、そこから得た情報も使わない人は??
いたとして・・・  ツキ師さんの修行中の方?!(笑)


ツキ師に大切なものは五つと言われています。
① 診 (見極め) 陰部を開いて観察し異常を見つける。視診。
② 触 (触り)  陰部を触り観察して異常を見つける。触診。
③ 嗅 (鼻技)  陰部を嗅いでその臭いから異常を見つける。嗅診。
④ 味 (味見)  陰部を舌で舐め、その味から異常を見つける。舌診。
⑤ 入 (さぐり) 陰部に自らの性器を挿入し、その感触から異常を見つける。突診。
こんな原始的とも思える方法で性病や性器変形・膣内変形などを見つけ、
自分を性病から守り、その女性に必要な性交渉の形などをアドバイスする事になります。
だから神秘的であり職人技であり、とても貴い仕事なんです。
そしてまた、血筋(血統)を超えてなる事が難しい職業でもあるのです。
そこには現代的価値観である“テクニック”よりも、信用・信頼が上を行きます。
それを担保するのがその伝統であったり、その家系なのです。


幸太郎はいよいよ、修行へと入ります。
しかしそこで一つ大きな問題が浮上するのです、とても大きな問題が。
それはまず、指導するのが基本的に実父である事。(これが付加価値として大きい)
正統に継承された技であり信用を担保するものであり、暖簾の証の様なもの。
既に父親を亡くしている幸太郎ですが、ここは辛うじて祖父が存在します。
そしてもう一つ、“遊女から学んでいないこと”が大切なのです。
これは決まり事でなく、ツキ師にも“その他大勢”は存在し、
彼らは大方遊女から学んでいました。今で言えば風俗嬢です。
ですがそこです、神格化されているものにはある意味理解に苦しむような解釈もあり、
まるで最高級の牛肉を育てる為に、まったく外界に触れさせず、内作りの物だけを与える、
そう、そんな感じです。
当時の遊女は性病を抱えるものも多かったですし、“遊郭に出入りした経験”、それは、
伝統や立場のある敷居高い屋敷に住む人々にとって許せない事なのです。
ではどうしたのか?
そんな厳格なものを求める依頼者はほんの一握りしかいませんが、
深川・西方のツキ師である神格化した四代目から何が変わって行ったのか、
そしてその何が特別だったのか、それは・・・
異常な事にも思えますが・・・  修行には外に出なくなったのです。
つまり、その修行、“診・触・嗅・味・入”の基本を学び、その応用、
それを身内で行う様になったという事です。

そんな事は“ツキ師”その物の存在より信じ難いかもしれません。
だから、それほどの覚悟、そして家族も含めた稼業に対する信用があったのです。
依頼側はある意味、その“異常”とも言える修行を担保して評価したのです。
恐ろしさも感じますが、今でもそんなところがあります。
下界の人間には分からない所でずっと生きた人間には、それが冷酷とか非道でなく、
“(下界で暮らす人間なら、我々の敷居をまたぐ為には)普通にやる事だ”
それをやって来て初めてここに入れる=私たちとお前にはそれほどの差がある、それは、
“家畜が人間と並ぼうと言うのだから、家畜として異常な事をしなくてどうする”
“それぐらいの覚悟を持って初めて信用してもらおうと思え”
そんな暗黙の注文もそこにある。でも、それを異常なんて考えない思考を持つからこそ、
人知れぬ地位にいる証でもある。それが悪意にはならないのが特別な世界に生きる人。

祖父はもちろん悩む。自分自身もその経験をしたが、その時は兄弟(姉)と従妹、
その二人に協力させた。まぁ、それを協力させたのは五代目だが・・・
しかし今は時代が違う。何より、少子化の現代はそのままこの家にも押し寄せていて、
早くこの世を去ってしまった父親。幸太郎に兄弟はいないし、五代目も戦争で負傷し、
子供が六代目だけになってしまったのだ。
八方塞がりだった。幸太郎に勉強させるべき女体が見つからない。
祖父は仏壇の前で座禅を組んだ。それも丸一日。
実は頭の隅でその答えを持っていたが、どうにもそれを決める勇気がなくて、
それを自分で決める覚悟を模索していたと言った方がいい。
答えはたった一つ。
祖父にとって自分の義理の娘、つまり、幸太郎の母親にその役をやらせる事だ。
それが一般的に“無謀”だとしても、ツキ師の家族、
自分の妻(幸太郎の祖母)も義理の娘(幸太郎の母親)も覚悟していると分かっていた。
ただただ、この時代、そして自分の長く大衆に馴染んだその思想が、
その運命をくだすだけの背中を押さなかっただけだ。

座禅中の祖父のところに向かったのは幸太郎の母親(千鶴)の方だった。
「お父さん、いいですよ私は。遠慮しないで下さい。竜司(夫)も望んでいるはずです!」
それを聞いて数秒、静かに目を開けた。
「頼む。お前しかいない。竜司を愛した分も、そして幸太郎をツキ師にしてくれ!」
千鶴は無言で深く頭を下げた。



その日がやって来たのは数日後だ。
もう夫と別れて長い月日を送ったその妻、そして幸太郎の母親は脚を開いた。
祖父の部屋、それも祖父も見守る中だ。義理の父親が見守る中で。
指導はツキ師のみなので、祖母は気を使ったのか外へ出て行った。
自分の母親の裸が珍しいわけではない。
でも、布団の上に全裸で横たわり、そして脚を拡げ、
陰部を幸太郎に見せて天井を見ている。そんな母親を見た事がないに決まっている。
その横にはまだ無言で、祖父が座っている。
いつもなら簡単に服を脱いで風呂に入る幸太郎も、女性経験のない青い男、
祖父・母親の前で、それも特別な目的を前にして全裸になる事がどんなに重圧か・・・
“幸太郎!”
その言葉だけで覚悟させる迫力が祖父にはある。
順番に服を脱ぎ、そして全裸になった。
幸太郎は同じように全裸になった仰向けに寝ている母親の足元に跪いて正座した。
視線は無意識ながら、準備して陰毛が剃毛された母親の陰部に向いている。
「おじいちゃんどうすれば・・・」
その言葉を幸太郎が言い終わるか否か、祖父は叱る様に怒鳴った。
「そんな甘えた事を言うなっ!!」
「これからは会話はいらない。ただ俺の言う通りに従えばいい」
「目の前の女は母親じゃない。ただの女と思え! そして見極めるんだっ!!」

千鶴はずっと天井を見て表情は変えない。きっと頑張っているのだろう。
義父の話も、心配な狼狽えてしまっている幸太郎の声も入って来るのだから。
全裸のまま、ただ晒されている、子供の前で。どれ程の覚悟が必要だろうか・・・
それでも一日目、そして二日目と、ひたすら陰部の勉強が続く。
千鶴はただただ全裸のまま横になり、陰部を幸太郎に触らせながら天井を見ている。
露骨な言葉で義父が幸太郎に指導する、
今はどんな状況だとか、女はこんな時どうだとか、千鶴はそれを聞いているだけ。
日に日に深い事を勉強する様になる。女体の扱いも深くなるし、技も出て来る。
千鶴はまだ十分に匂いの残る年齢だ。陰部を触られていじられる時間が長く成れば、
そして日に日にその触り方が成長して行ったなら、それへの反応を抑える事は大変だ。
「千鶴、我慢しなくていいぞ」
義父からその言葉が千鶴に掛かるが、覚悟しているとは言え、目の前にいるのは・・・
天井を見ているのに、要所要所で顔を歪める様になる。
そして何より、もう大切なところは潤してしまっている。
「うぅぅ・・・」
もう我慢の限界だった。幸太郎は成長している。そして血筋なのか、センスがいい。

千鶴が何より恥ずかしのは、自分の反応をいちいち義父に解説されてしまうこと。
そして逃げようとしても、その心、体、逃げ道を塞ぐ様に幸太郎にアドバイスする。
千鶴はもう本当に必死で押さえ込もうとするが、すればするほど苦しみは深くなり、
5日目、初めて指だけでいかされてしまった。
大きな声を上げて、そして陰部をヌルヌルに濡らして尽きた自分。
それを冷静な義父に見られ、そして何より、それを息子にされた恥ずかしさ・・・
「あぁぁ!!!!」と叫ぶように泣き出して、腕で瞳を隠した。
覚悟していた、分かっていたはずなのに、それでも千鶴にはショックだった。
「千鶴、いいんだ、お前はいい仕事をしたんだ。幸太郎にいい勉強をさせたぞ!」
全裸で泣きながら横たわる千鶴には厳しい慰めの言葉だが、
それが幸太郎をツキ師にする覚悟そのものだ。


日に日にペースは上がって行く、そしてさらに深くなって行く。
ついに母親の中に入って行く事になる。剃毛までして、まるでプロの女性のようだが、
心は震えている。幸太郎を前にしてもう母親ではない。
亡くなった夫との初めての日のような淡いものもまったくない。
ただただされる事、そしてその反応という辱めだけを受け止め、全身で応えて教える。
幸太郎が入った瞬間、千鶴は予想を超えて大きく深い声を出した。
「“あ“あ“あ“ぁーーー!!!」
その声は部屋いっぱいに響いたし、指導している義父の想像も超えたものだった。
もうずっと長い間、そこには何も(誰も)受け付けていなかった。
夫への想い、ずっと守って来たもの。そして・・・
幸太郎はそんなすべてを一気にぶち破ってしまった。想い・肉体、そのどちらも刺激して。
ツキ師は避妊具を付けない、そのまま挿入する。
義父に見られ、これがツキ師教育の指導だと分かっていても、
息子の陰茎がそのまま直に押し込まれ、あろう事か、全身で受け止めてしまった。
もう千鶴は母親の顔を装えない。女だ、ただの女の顔になり、
いつしか幸太郎の背中に手を回していた。
幸太郎からも無言で、そして静かに繰り返し頷いている祖父が視界に入る。

入れ方・動かし方・抜き差しのペース、違っていればその都度注意され、
反対に汗ばんでやるせない表情の千鶴の顔も同時にチェックされる。
もうまるで普通の女のようによがり、
膨張した内部がセンサーの様に幸太郎の深さに反応してみせた。
「幸太郎っ出せっ!!!  抜くんだ!  早く抜けぇ!!」
その祖父の怒鳴り声で幸太郎は突き飛ばす様に千鶴から離れ、
大量の精液は千鶴の下腹部から胸元、そして顔、さらに髪の毛、壁にまで飛んだ。
千鶴は「あぁぁぁ~」と声を上げて横向きになり、疲れ切った様に深い呼吸をした。
幸太郎が千鶴をティッシュで拭いてやろうとすると祖父は、
「待て、幸太郎、お前が拭くな。その前に千鶴に男の拭かせ方をやらせろ!」
「拭いてやる場合もあるが、それは簡単だ。練習するのは相手に拭かせる方法だ」
「それに口仕事を女に教えなければいけない時もある。まずお前が知らなければ・・・」
祖父はそう言って千鶴を見た。
千鶴はハッとした。さすがに口仕事の事までは想像していなかったからだ。
自分の息子の陰茎を咥え込む事まで・・・
でも、今ここにいる祖父、その人も、自分の姉、そして従妹で勉強して来たこと。
今回はそれが母と息子と言うことになるが。
さすがに躊躇する、口に含むこと。それも息子自身の陰茎を息子自身に見せて咥える事。
そして終わったばかりの、精液で濡れて輝いているそれを咥える事。
それを義父の前でやる事・・・
それでも千鶴は断らない、どんな事でも。

日に日に進んだ。口仕事からのスタートや後背位、手仕事もやる。
横にさせた自分の息子の陰茎を掴み、その横に座って手仕事をする。
それも義父が、その息子に女性への手仕事の方法を教えながら受けさせた。
持ち方・擦る強さ・擦るペース、千鶴はその通りにやらなければならない。
そんな一つ一つを繰り返して行く、そして重ねて行く。
物凄い勢いで成長した幸太郎が一番戸惑ったのは、それは母親との口づけだった。
それもお互いの唾液を飲み合うような深いものまで教わる。
“相手の全てを受け入れてあげる重なり(セックス)こそが最高のツキ師である”
代々伝わる、それがこの家の教えのようだ。


一ヶ月。もう幸太郎に戸惑いはない。
そしてそれ以上に、千鶴は自分の持つすべてを幸太郎に許し、すべて受け止めた。
穴と言う穴を全て愛される事。
若い初娘に教える事と、沢山の遊びを経験した貴婦人では求められるものが違う。
夫を亡くして長い年月を過ごしている女性は、本当に懐深くまで愛を求める。
その事は解放された千鶴からも学んだことだ。
そして女性に奉仕させる事、つまりその女性が愛する男性に奉仕する方法の伝授、
その技術も、自分自身が大きくならなければ教える技にならない。
若くして夫を亡くした千鶴は、その亡くした夫を幸太郎に重ね合わせる様に、
必死で幸太郎への手仕事・口仕事を行った。それは幸太郎も翻弄されるほどで、
幸太郎の知識・能力の向上にもとても役にたったはずだ。
一番躊躇って、一番苦戦した口づけも、今は本当に上手くなった。
母親が自分の人生のすべてを賭けた覚悟が、そのまま幸太郎に伝わったのだと思う。
千鶴は計三か月にも及ぶ指導をすべて受け止めてしまった為、
もう完全に開花され、自分の息子を前に、最高に妖艶な女になっている。
その艶やかさはすれ違う男を引き寄せるほど。
毎日大量の愛液を、それもプロもプロ、伝説のツキ師の技を受け続けたのだから・・・



数回の実践訓練を、とても有名な富豪夫人の相手で磨き、
幸太郎はついに、半年という期間で“深川ツキ師八代目”を襲名した。
襲名と言ったところで、それを知る者が何人いるだろうか。
だが、幸太郎自身が驚くが立て続けに依頼が入る。
それも誰もが知るような名家ばかりだ。
普通に生活していれば絶対に交わる事のない女性。そんな人に性を教え、行為を教える。
一番大切なのは喜びと感動だ。それは自分も、そして何より大切な相手に向けて。
愛を育む行為を伝授する素敵な仕事だ。
それも超一級品の技と信頼を勝ち得たからこそ意味がある最高のもの。

幸太郎が一人前のツキ師になった頃、祖父は突然の病で急逝した。
そして・・・
人の理解できない世界には、それに増して理解が出来ない事が上積みして行く。
母親・千鶴が内縁の夫を家に迎い入れた。
例の事があって、千鶴は見違える様に変わった為だと思う。若く美しくなった。
そして一番大きい変化が、その内縁の夫の娘、幸太郎はその娘と結婚したのだ。
それは幸太郎が“深川ツキ師八代目”と知っての事。
千鶴の内縁の夫は、それを知って娘を幸太郎に委ね、自分は千鶴を愛した。
複雑だ。実に複雑で凡人には理解できない。
でも、世の中にはそんな世間の理解とは別の世界がちゃんと存在して、
その計り知れない構成要件は、そこに特別な物を生み出している事は確かだ。


生きているうちにツキ師に会うことは無いだろう。
それでも幸太郎にも跡継ぎが出来るかもしれない・・・




最後までお読み頂きありがとうございます!
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