「カメラマンの父、そして彼の残したもの」
ずっとこの部屋に入る事を避けていた気がする・・・
現実を認めたくなかった事、そして同じ道を進んでしまった事。
今は尊敬しているんだ・・・ 父さん。
もう遠い昔に旅立った父親。俺の中のその存在はずっと特別だった。
同級生から揶揄われ、近所の目を気にして過ごした子供の頃、俺は父を憎んでいた。
父の仕事を理解出来ず、そしてそれを父親そのものの人格にまで繋げてしまって・・・
母親はそんな俺を遠くから見守ってくれていた人だった。
いつしか俺が父と同じ道を選んだ時、ただ何も言わずにそっと涙を流した人。
その母が先日旅立った。父の想い出をそのままに残したこの家を残して。
俺は早々にこの家を出て、同じ道を歩んだとは言え、
どうしても父のその部屋・その仕事の軌跡に触れる事が出来ないままでいた。
しかし母親さえ消えたこの家、外にいても唯一の跡継ぎである俺には、
この家の後始末、そして同じ道に進んだからこそ、遠ざけていたからこそ、
この年になってやっと、母親をもなくしてやっと向かい合う場所に立った。
カメラマンだった父。彼の部屋には数えきれない数のアナログがそのままだ。
俺は最初からデジタルでスタートした世代。
技術的な事も勿論、得意とするジャンルも違うし、
“父から学ぶものなど何もない”
そう思っていたし、それがこの部屋に近づかないで済ませる理由にもしていた。
触れてみて思った、自分が本当に未熟であった事。
ジャンルが違っていても学ぶものがそこにあった。そして勘違いしていた・・・
日本を代表するような名前の知れたカメラマンではない父親だが、
一部には記憶に残っている名前だろう。
それが報道写真などで有名ならば、家族、きっと俺も胸を張って幼少期を過ごしたはず。
幅広い活動をしていた父だが、彼の名前を有名にしていたのは・・・
アイドルのグラビア写真だった。
全体の仕事としては片手間に撮っていたであろうその作品たち。
でも、そんな写真たちが父の名前そのもの、代表作そのものとされていた。
父は、人気女優やアイドルが出版するような有名写真集を撮れるような写真家ではない。
2番手・3番手、いや、3番手・4番手の写真家で、
有名アイドルで言えば雑誌・週刊誌の水着グラビア、そして無名時代の女優ヌードなど。
いくつかの写真集に携わったが、どれもほとんど知られていない程度のもの。
では、それでいて何故、父の名前は知られているのか。
それは、写真集を任されるような有名写真家が“芸術的路線”で作品を仕上げるのに対し、
父の撮る写真は露骨だった。
明らかに目的に特化した、“狙うべき場所をそのまま狙っている写真”が多い。
実際は沢山の違う角度で撮っているはずだが、きっと結果的にONになったのがそれ。
2流以下のカメラマンは、採用側のチョイスに従うのみだ。
結果的にその“露骨な写真”は男性たちのニーズにジャストだった。
有名写真家が写真集でがっかりさせる事を頻発させる中、
父が撮ったグラビアは現在でもネットの一番中心的位置で残って輝いている。
しかし・・・
俺は度々、その被写体本人の許せない物言いに触れる事になる。
テレビでその写真が使われた時に、彼女たちが発した言葉。
“私の黒歴史” “あんな写真は早く無くして欲しい!” “むりやり撮られた”
テレビの前にいた俺には熱いものが込み上げていた。
確かに父の残したその写真、名前を有名にしたグラビア写真はどれも露骨なもの。
でも、はっきり言って、美人でもない彼女たちが今日でもそんな立場で画面にいるのは、
紛れもない、父の撮ったあの写真たちが彼女たちを押し上げたからだ。
現代の女優やアイドルと違い、顔のアップなど彼女たちには少ない。
当たり前に思う。彼女たちは美人じゃないんだから。
もっと言わせてもられば、そのスタイルも“美しい”なんてものじゃない。
唯一のチャームポイントとも言うべき胸、当時は大きい胸のアイドルが少なかった時代。
父は彼女たちのそれを最大限魅力的に写していた。
現在でも高価で扱われている彼女たちの水着グラビア・水着ポスターは、
間違いなく当時の若い男性たちに重宝されただろう。
その意味は、まだ10代だったであろう彼女たちにもちゃんと分かっていたはずだ。
自分が求められる“悩ましげな表情・谷間を大きく強調した姿勢”
それがどんな意味を持っているのか、そして結果的にどんな使われ方をするのか・・・
そんな彼らが落としたお金こそが、彼女たちの今日の立場そのものなのに。
きっと恥ずかしい記憶のわりに、当時の彼女たちの収入はスズメの涙だっただろう。
でも、それでも彼女たちが今日まで活躍できるきっかけになったのは、
そう、あの露骨なまでに水着の胸元をズームアップされた父が撮った写真のはずだ。
俺は父の仕事を愚弄するような物言いをした彼女たちを許せない。
自分を勘違いしている彼女たちを。
父が大量に残したカメラ・カメラ部品・ネガ・・・
そんな中、大半を片付けた最後に、まったく違う場所で大切に保管されたネガを見つけた。
どれも見た事のあるショットなのだが・・・
そう、いまだにネットにスキャンされた画像がいくつも出て来る有名なショット。
でも、当然だが、そこにはONにはならなかった大量の別ショットがあった。
有名なショットとの僅かな違いながら、数段セクシーさが上にあるもの。
また、まったく見た事のない水着・ポーズ、きっと全てOFFになったものも。
そして、いちばん期待していたそれが・・・
カメラマンは幅広く写している。被写体である本人の意識以上に広い撮り方で。
ビキニのトップを外した画像だが、ONとなった写真のその前後が全て写っている。
ニップレスをつけているもの、中にはそのままのものもあった。
俺は大量のネガを漁り、ついに見つけた。あの自分知らずの女たちのOFFショット。
今とまったく違ったであろう、言われるまま従ったあの時代の彼女たち。
あんな有名アイドルたちが、現場では気前よく脱いでいた。
70年代後半から80年代のグラビアらしく、日焼けとサンオイルから匂い立つエロス。
今は世の中の母親代表みたいな顔をして、“青少年の健全育成の為”などと、
都合に紛れて自分たちの黒歴史(インパクトの強い水着画像)を葬り去ろうとしているが、
彼女たちは当時の母親たちの心配を無視して、大きな胸を強調したビキニで誘惑した。
少年たちに毎晩、自分たちが母親となって嫌うそれを彼らにさせていた過去がある。
自分たちの商売が終われば、俺の父親の仕事を悪として消し去ろうと言うのか・・・
俺は、今なおインパクトが色褪せない父親の撮ったグラビアに誇りを感じる。
同時に、それを愚弄して自分たちの都合で生きる彼女たちを許せない。
どうしても彼女たちが、自分たちの今日を作ったあのグラビアを葬ろうとするならば、
俺は世に出る事の無かった、当時の彼女たちの全てが写っている最高のショットを、
“流出”を装ってネットに流してしまうかもしれない。
当時の自分たちの仕事を“大人たちのせい”と言うならば、当時の彼らに返金するべきだ。
そうでないなら、俺は自分のパソコンにわざとウイルスを感染させるかもしれない。
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(グラビアアイドル 70年代 80年代 ビキニ ニップレス)
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