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「後悔の添乗」




彼女の名前は平野奈美。25才の添乗員。
とは言っても、小さな旅行代理店の、しかも契約添乗員だ。
東京の観光専門学校まで卒業したものの、最初の大手代理店での仕事で体を壊し、
故郷に戻っての再出発として、なくなく、今の仕事に就いた。
それでも現場での経験もそこそこに積んできて、仕事は手際よくなっていた。

この業界のみでなく、どんな業界・業種でも、二流・三流となるほど職場は荒れ、
関連業者も客の質も落ちて行くのは例外でない。
大手に行かない仕事とは、大手が取らない仕事か、大手は受けない仕事・・・
いずれにしても、劣悪なものが多い。
安いバス会社と安い宿、そして扱いに困る客のセットは定番だ。

今回の仕事・・・

今時珍しい、地元の建設会社の社員旅行。
社員旅行など行う会社もほとんど見かけなくなった今日だが、
建設関係が景気が良い事と、この会社の経営者が昔気質、“社員は家族”と社是で謳う程。
また、代理店の所長自らのVIP客で、その意味合いは計り知れない。
この手の旅行は特に金回りが良く、大金が落とされる宿は勿論、
バスのドライバーやガイドにも多額のチップが弾む事が多い。
代わりに、とてもわがままな注文が多いのも特徴だが・・・

旅行先は熱海。
今更の熱海だが、この手のグループは行先など関係ないのだ。
目的は直球で、宴会。それも“ピンクコンパニオン”目的と分かりやすい。
そこに恐ろしい金額がつぎ込まれるのだから。
“行先”を選ぶのではなく、良いコンパニオンが手配できそうな先を選んでいる。
今回の宿泊先も、規模は大きいものの、既に建物も古くなり、
大きな宴会場も持て余し、平日の客室はツアーの客ばかりで埋めている施設。
それでも、受け入れる側もそれを心得ているので、“話が早い”わけだ。
なまじ高級な宿などでは、気楽に騒ぐ事も出来ない。
若いあんちゃんのストレス発散には最適な宿とも言える宿なのだ。


旅行まで一週間に迫った頃には、新人で無い奈美の事、既にコンパニオンの手配を終え、
後は最終人数の変更に対応する事だけの状態だ。
所長曰く、「○○建設のオーナーは筋が曲がった事が嫌いだから、気を付けてね」
「オーナーは気持ちの人だから、良い旅行になれば、うちを大切にしてくれる」
そう繰り返した。


旅行当日、オーナーを含んだお客さん15名、ドライバー・ガイド、そして奈美。
中型でも済むところを、大型のサロンバスに奮発して出発した。
最後部が豪華サロンになっているタイプで、勿論そこにはお偉いさんが陣取る。
若手のあんちゃんは前方になるが、ガイド・添乗員に近い事で、むしろ喜ぶ。
今回はガイドが40代、しかも見た目が良くない。目当ては奈美だけに集中する。
これもお決まりだが、この手の団体は酒のスタートも早く、そして多い。
案の定、最初の休憩地で追加の酒を積み込む始末。
車内は酒の匂い一色。若手は後ろのお偉いさんを気にしてはいるが、酒が入り、
後は後ろで盛り上がっていれば、前は前でという事にもなる。
後ろに酒を運ぶ度に、まだ十代のようなあんちゃんが尻を触ってくる。
最初は注意してくれた年配者も、いつしか気にならなくなる。

形だけの観光を終え、一番の目的の為に早めに宿に入る。
勿論、バスを降りる面々は皆既に、真っ赤な顔をしている。よろける者も多い。
宿の客室係、とりわけベテランのおば様方は、慣れた笑顔で客室に流して行く。
酔っていてもお構い無し、部屋に付けばすぐに浴衣に着替えて大浴場へと行進。
稀に若い客室係が当たってしまうと、それは例に漏れず悲劇となる。
今回は一人だけ若い子が混じってしまっていた。
しかし、人数の大きい客室ゆえ、ベテランの客室係と二人体制だった。


5時を回った頃、奈美に内線がかかって来た。フロントから・・・
「申し訳ありません、コンパニオンの予約で手違いがあって・・・」
勿論、奈美の顔色は変わった。
フロントの人間が奈美の客室に向かうと気遣ったにも関わらず、
奈美の方からフロントへと飛び出して行く有様だった。
「申し訳ありません、何とか5名は手配出来たのですが・・・」とフロントの責任者。
元々は豪華に10名の予定。しかも、最初から2次会の“ピンク”も5名で手配のはず。
最初のコンパニオンの置屋には連絡が通ってなく、それでも必死に、
他のコンパニオンを手配したようだった。
一番楽しみにされている“ピンク”に関しては、9時から、しかも3名しか手配出来ない。
6時スタートで、8時から二次会(部屋宴会)の予定だったので、1時間空いてしまう。


奈美は建設会社のオーナーさんと役員がいる特別室に謝りに行った。
「申し訳ありません・・・」内容を的確に説明した。勿論、ホテル側の手違いである事も。
困り顔のオーナーの横にいた役員が口を開き、「困ったねぇ・・・」
「あいつら、これだけを楽しみに来たんだからなぁ・・・」とつぶやき、
「後はホテルの人とコンパニオンで話してみてよ。二次会は係長の担当だからさ」
「宴会部屋にいる○○だから」と、サジを投げた。

その足で赤ら顔で盛り上がっている係長を訪ねたが、笑顔は一瞬で消え、
元々ヤクザと紙一重のその男は怒鳴り上げた。「お前、顔潰す気か?!」
解決しない宴会の時間は来てしまい、情報が回ったのか、空気が淀んだまま宴会は終了。
ついに部屋宴会の時間が来てしまった。
「9時に姉ちゃん来んだろ?! それまでどうすんだよ!」怒鳴り声が響く。
「とりあえず、お酒と料理を御用意させて頂きましたので、召し上がってください」
奈美はそう言って、お酌に回る。運悪く、ベテランの客室係は体調不良で帰ってしまい、
若い客室係と二人で、9時までの場をやり繰りしなければならなかった。
中心人物は完全に怒っており、それを宥めようとする人物など誰もいない。
若い客室係の女の子も恐る恐るではあるが、淡々と酒を注いで回る。

「お前さぁ、責任感じてんの?!」「色気ぐらい出せよ!」「上着ぐらい脱げよ!」
中央の男がたたみ掛ける様に言葉を浴びせた。
奈美はスーツの上着を脱ぎ、ブラウス姿になってお酌に回った。
「おいっ、ホテルの責任なんだろっ!」「お姉ちゃんも上着ぐらい脱げよ!」
今度は客室係の女の子に言葉を浴びせた。
彼女の制服は上下セパレートのもので、上着を脱げば、下は普通下着の状態だ。
同じ様な事を3人ぐらい、立て続けに言われ、座り込み、観念した様に上着を脱いだ。
幸い、彼女は中に白いTシャツを一枚着ていたので、直接露わにはならなかったが、
薄い生地で、しかも暑い部屋。そして怒鳴られて緊張していたせいで、
既に背中はびしょ濡れた状態だった。

奈美にしても、既に吹き出すような汗が脇から広がっていた。
「お前らも飲めよ!」係長の横にいた男が二人に向かって言った。
客室係の彼女は、「私未成年ですし、仕事中なので、飲む事は出来ません」そう行った。
「お前分かってんのか、ホテル側が大きなミスしたんだぞ。お前給料もらってんだろ!」
そう捲し立てられ、ついには涙を流し始めてしまった。
隣の男に抱きしめられ、「少しだけ飲んでみなよ」そう言って強引にビールを飲まされた。
奈美は次々にビールを注がれて、「俺の酒飲んでよ!」とお決まりの脅迫が飛び交った。
客室係の若い子も少しずつ飲まされてしまい、顔を赤らめていた。
次々に注がれる中、急に味が変わった事に奈美は気が付いた。
しかし、もう、それを断る事は出来なかった・・・


明らかに体が熱くなり、視界が揺らぐようになった。同じ頃、向かいに座っていた彼女が、
既にTシャツを脱がされ、ブラの中にも手を入れられている状況に気が付いた。
時既に遅しで、自分も後ろから胸を触られていた。次に向かいの彼女を見た時には、
上半身裸で、既に畳の上に押し倒されていた。自分も脱がされている・・・
しかし、何も抵抗出来ない。それどころか、体から汗が吹き出して苦しい。
「布団敷けよ!」誰かが言った声が聞こえ、数人が隣の部屋に移ったのが分かった。
「敷いたぞ!」と隣の部屋から聞こえ、二人は数人に持ち上げられた。

「気持ちよくしてやるよ」、そう言われ、全てを脱がされ、男が上に載って来た。
隣では既に、客室係の女の子が二人がかりで弄ばれていた。
どれだけの時間が過ぎたのか、布団の中で腕時計を見れば、11時を回っていた。
隣の客室係の彼女は意識を失っていた。
彼らは涼しい顔をして、「気持ちよかったよ」「ありがとう」と服を差し出した。

後に思えば、9時に来た“ピンクコンパニオン”は帰されたようで、しかも、
部屋に入ったままの客室係が遅くなっても戻っていない事も承知のはずで、
ホテルや関係者は了解の上、その事をそのままにして見殺しにしたと分かった。
“ピンクコンパニオン”以上に、素人の女と直接出来る方が何倍も得だったのだろう。
奈美は抜け殻になり、その仕事を辞めた。





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ジャンル : アダルト

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