「彼女が少女?! 少女が彼女???」
「いつまでも悲しんでたって仕方ないじゃん! 愛美ちゃん可愛かったもんね・・・」
「もう二度とあれほどの彼女は出来ないだろうけど、落ち込んでちゃダメだぞ!」
何だ?
どこからその声が入ってくるのか誰が言っているのか、俺には分からない。
しかし・・・
目の前には俺を見ている少女がいる。そして彼女の口元はそれを呟いている。
俺は何が起きているのかが理解出来なかった。
「分からないのも無理ないね・・・(笑)」
少女はそう笑って俺に言う。その言葉たちは間違いなくその少女が発信源だ。
しかし何故その少女はそんな事を言うのか、それを知っているのか・・・
俺は半年前に彼女を事故で亡くしていた。突然の交通事故で。
彼女とは2年近く付き合っていたし、週の半分は俺のアパートに来ていた。
同じ年、そう生きていれば二人揃って28になっていたはずだった。
喧嘩が多かったけど、それでも仲直り出来た後は最強のカップルになれた二人。
いつしか俺たちは二人で一つと思う様になっていたぐらいだったし・・・
それなのに前日の笑顔が嘘のように突然俺の前から消えてしまった。
待ち合わせの場所で遅刻とばかり思っていた俺は愛美を責める言葉ばかり考えていた。
こちらから連絡しても携帯は繋がらず、俺はそのまま2時間以上その場所にいた。
そして怒り、諦めて自分のアパートに戻って間もなく彼女の友人から電話が来た。
その子は俺と愛美が付き合っている事を知っていて、愛美の携帯から掛けてくれた。
“愛美が・・・”
今はその言葉しか思い出せない。
俺はただ少女を見た。
“何言ってんだこの子??” “何なんだこの子は?”
俺はただ固まっていた。
「私の名前は優菜。でも・・・ 愛美っ(笑)」
「あなたが大好きだった愛美ちゃん。すっごく美人だった愛美ちゃん!」
俺がポカーンとして聴いていると、俺の肩に軽いパンチを入れた。
?????
すっかり忘れていたが、それは愛美が俺によくやっていた仕草だった事を思いだした。
血の気が引き、体が固まってしまった。
「やはり理解出来んね。無理もないよね、私も誰にも言えてないんだから・・・」
少女はポンと俺が座っていたコンクリートベンチの横に座った。
まだ小さい体。痩せているし化粧などしていない。
素直な淡い髪をポニーテールにしていて、ほっそりとした長い足はカモシカの様。
あどけない表情も含め、まだ小学生に見える。
俺は黙っていた。と言うか、言葉がまったく出て来ない。
誰でも同じ状況になったなら同じようになると思う。
ただ静かに彼女を見た。その小さな彼女を・・・
「会いたかった。ずっと会いたかった・・・」
「一人だったんだよ。ずっと一人。誰にも何にも言えなくて・・・」
彼女は涙を浮かべていた。
顔も違うし声も違う。でも、それなのにどこか彼女と同じ物が伝わって来た。
「愛美? ・・・・・」
俺がその子に声を掛けると彼女は泣きながら、
「優菜! でも愛美なんだってば・・・」
彼女はそう言って顔を落とした。
少しするとその子の両親と思える夫婦がやって来て、
「申し訳ありません。ちょっと病気があってこの子、少し不安定で・・・」
そう言ってその少女を連れて行った。
俺は見送ってしまったが、後になって後悔した。何も聞けて無かったから。
それでも約1週間後の土曜日の昼間、彼女は俺のアパートの扉を叩いた。
「懐かしいなぁ~ この部屋。匂い」
上がり込んだ彼女は瞳を閉じていた。
俺はしっかり丁寧に、そして何度も同じ事を確認しながら話を聴いた。
彼女が意識を戻したのは2ヶ月程前の事だったらしい。愛美として。
しかし彼女自身も知らない大人たちに囲まれ、そして何より自分の体に驚いたそうだ。
あと少しで28才になろうとしていた女が、小学5年生の女子になっていたのだから。
あまりに複雑な環境の為に、彼女は口を閉ざしたらしい。“愛美”は封印した。
事故にあった瞬間にフェードアウトした記憶。そしてベッドから記憶は再スタートするが、
肉体や環境が全く知らないものだったという事だ。
正直、そんな説明を受けても半信半疑だった。映画の話にしか思えない。
愛美を封印し口も閉ざした彼女だが、優菜ちゃんの事を少しずつ知る事になる。
小学5年生のその女の子は部活でイジメにあい、川に身を投げたそうだ。
消防に発見されたそうだが、意識が戻らないままだった。
そしていつしか、二人の魂は入れ替わり、“愛美の心+優菜の肉体”としてここにいる。
その説明を優菜の肉体である俺の彼女であった愛美として俺に言って来る・・・
話を聴くほど、顔や声が違っても、確かに愛美に見えてくる。
俺は嬉しくなって愛美を抱きしめた。すると・・・
「ちょっと! ダメ。小学生抱きしめちゃダメでしょ?! 犯罪でしょ?!」
愛美であるはずのその子が俺に言う。
「ちょっと待てよ! だってお前愛美だろ?? 彼氏に抱きしめられて問題あるか?」
俺は言った。すると彼女はさらに、
「あぁ??! もしかしていやらしい事考えたでしょ?! 私小学生だよぉ~」
その子はそう言って俺を睨んだ。
こちらも混乱した。確かに女性として小学生の女の子を抱きしめてはまずい。
しかし会話は完全に28才の愛美だ。
俺の部屋に歯ブラシも下着の替えも置いていて、毎回求め合っていた二人・・・
その愛美として会話できるのに、肉体が小学5年生とは何とも残酷だ。
愛美は親の目を盗んでこの部屋に来るようになった。特に週末は。
俺の腕の中で眠る事もあるし、ソファーでは俺にもたれかかる。
そんな時、痩せてはいるけれどまだブラジャーすらつけないその胸が俺に当たり、
微妙に柔らかいその感触にどうしても気持ちがそちらに行く。
すると彼女は怖い顔になり、「変態! スケベジジィ!!」と俺に言う。
でも、彼女はそう言いながら笑っているのだけれど。
俺が調子に乗って彼女の胸を触ると、彼女は俺にビンタした。
「おいおい・・・ そりゃぁ~ないだろう!」
俺がそう言うと彼女は、
「私だってあなたに抱かれたいよ。あなたが辛いのだって分かるよ。分かってる」
「このカラダは優菜ちゃんなんだよ。私のものじゃない。彼女の体を勝手には出来ない」
彼女はその小さな体で苦しい声を上げた。
俺は少し申し訳ない気持ちになった。
愛美がいてくれるだけで幸せなはずなのに、体まで求めようとした。
そしてその体は優菜ちゃんなのだから・・・
小学5年生の体そのもの。
俺は数年間苦しむ事になった。
小学生から中学生へ。彼女はどんどん成長して行く。
中身は既に大人の愛美だが、その体の成長は生々しい。
それを前にして我慢すると言うこと・・・
ある意味それは地獄の日々だった。優菜ちゃんの肉体は美しく変貌する。
しかしそれを愛する事は優菜ちゃんを否定する事。そして愛美をも否定する事。
それでも一番苦しんでいる愛美にはそれを言えず、俺は一人苦しんだ。
もちろん愛美もそれを感じ申し訳ない気持ちを溢れさせていた。
それを見ていれば俺の我慢など単なる我がままなのかもしれない。
愛美は相変わらず家族や学校の中では“特別な存在”として生きていた。
俺と一緒にいる時間だけが“愛美”としていられるのだから・・・
残酷にも優菜ちゃんの肉体はより“美少女”となって行った。
クラスメイトや身近な人間からの告白に苦しむ愛美。
もちろん俺だってそんな話が嬉しいはずもない。
中学から高校に上がる頃は本当にそのピークで、
二人ともノイローゼになりそうだった。
俺は覚悟を決めた。優菜ちゃん16才の誕生日に愛美と一緒に愛美の墓参りに行った。
そしてその愛美の墓前で、
「優菜ちゃん、ごめんなさい。俺は愛美が大好きです。どうしても一緒にいたい」
「どうかあなたのカラダを抱く事を許して下さい。一生愛する事を約束しますから!」
愛美は横で泣いていた。
その夜、愛美を抱いた。他人は“女子高生を抱いた”とするかもしれない。
しかし俺たちは結婚を約束し、優菜ちゃんの人生も抱える事を約束した。
俺たちは3人で生きて行く事を選んだ。
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