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「美沙の残業」




俺と美沙は付き合って3年になろうとしていた。
同期入社の仲間として仲良くなり、そして恋愛に発展。
飾らない性格と人を受け入れる広い心を持った、尊敬できる恋人だ。
美沙も俺と一緒にいる時が一番安心できると言ってくれていたし・・・
俺は自然に、美沙との将来を描いていた。
美沙を無くす事など考えた事も無かったし、それは永遠だと疑わなかった。
そして今、俺は苦しみの中にいるのだが・・・



交際が2年半を過ぎた頃、美沙は違う部署に異動になった。
新しく立ち上げた新規事業としてのアンテナショップを任されたのだ。
まだ20代後半の美沙にとっては大抜擢だったはず。
当然美沙にはチカラが入っていたし、何より忙しく、デートの数が減っていた。
まぁ、既に二人の仲は安定した状態だったから、俺は彼女を見守るつもりでいた。
すれ違いが増え、偶に会っても店の事ばかり言っている美沙と喧嘩も増えた。
そして今になって思えば、店の女の子の事で悩み出した時から大きく変わった気がした。
その悩みは2.3回聴いた記憶があったが、それ以降デートが出来なくなる。
忙しくて。疲れているので。体調が悪い。大切な用事がある・・・
俺の方も少し呆れ気味で、こちらからも距離を置こうとしていたかもしれない。
その頃には日に日に笑顔を無くし、疲れ切った美沙の表情しか見なかった。
俺の大好きだった美沙が変ってしまう悲しみ、そして不安。


我慢しきれなくなった俺は、美沙の仕事終わりを待っていた。店の外で。
もう閉店の作業もしていて、シャッターは降り外灯も消された。
10分ほどして数人の従業員の女の子が帰って行って、さらに店内の電気も暗くなる。
数分して、どうみても10代後半から20代前半の男数人が入口を叩いた。
美沙が中から顔を出し、男たちを店内に招き入れていた。
俺は業者か何かで、“これから清掃や改装の様な作業が待っているのかなぁ・・・”
そう一瞬考えて帰ろうとしたが、店内が暗くされた事が気になった。
店前でいくら待っても動きはないし電気も明るくならない。
俺は窓越しに近づき、木の陰で通行人から隠れた壁の横に入り込み、
窓からギリギリ見える店内の奥に目をやった。
最初は暗くて見えなかったが、何をしているかが分かった瞬間に思考が停止した・・・


美沙が上半身裸で男にフェラをしていた。そして後ろから胸を揉まれている。
自分より年下であろう男たちはみんな楽しそうな表情だ。
美沙は黙々とフェラを続ける。
俺はその現実が受け入れられない。俺の知る美沙はそんな女じゃない。
あまりのショックに何も感じない自分がいた。
そのうち美沙は抱き上げられ、カウンターに手をつかされて後ろからやられていた。
激しく体を揺さぶり、聞こえないはずのここまで声が聞こえて来そうなヨガリ・・・
さらにカウンターの上に座った男のモノまで口に含んでいた。
俺は放心状態のまま自分の家に帰った。

信じられない。
俺を大切にしてくれて、誰よりも約束事を大切にし、人を裏切らない美沙が・・・
その日は眠れず、会社でも数日朦朧とした日々が続いた。
俺は今一度美沙を確かめたかった。
会社から帰り自分のクルマで出掛け、今度は美沙のアパート近くにクルマを停めた。
少し待つ間も、先日の“あの光景”が頭を過ぎり、
“今夜もそんな事が行われているのでは・・・”、そんな事ばかり考えてしまう。
そのうち美沙が買い物袋を抱えて遠くに見えたが、携帯で誰かと話している。
俺は美沙の話が終わったらクルマから降りようと思っていた。
美沙は携帯で話ながら後ろを振り返る素振りを数回し、やがて男たちが現れた。
あの男たち。

俺はハンドルに顔を埋めた。
大好きだった美沙・・・
もう、俺の物ではないのだと自分で確認してしまった。
俺は動けず倒れ込み、そのクルマの中で眠ってしまい数時間が過ぎていた。
起き上がり帰ろうとバックレストを起こした時、やつらがアパートから出て来た。
俺は覚悟を決め、美沙の部屋に向かう事に。
部屋のドアホンを押してもなかなか応答がない。
俺はドアノブを回した。鍵は開いたままだ。
ドアを開けて中に入ると、全裸で倒れたままの美沙がいた。
美沙は慌てて腕で胸元を隠し蹲った。
髪を乱し、そして泣いている。
キッチンで抱かれていたようで、テーブルは動き、物が散乱していた。
俺は状況が飲み込めず、そこに立ち尽くした。


美沙は沈黙の後、立ち上がり、そして俺の下に跪き、
「ごめんなさい・・・  許して。 ごめんなさい・・・」
そう言って激しく泣き、床に崩れてしまった。
俺はどうして良いのか分からずに玄関に立ったままだった。
とても長い時間だったと思う・・・
美沙が少し落ち着いたところで俺に自分から話をしてくれた。
それは・・・



数か月前、店の一番若い子の事で悩んでいた時だったそうだ。
何度も彼女の店での振る舞いを店長として注意し指導する日々が続いていたよう。
ある日、彼女を自分の部屋に誘い食事を共にしようと誘った日だった。
美沙が食事の支度をしていると、急にめまいがし意識を無くしたそうだ。
後から思えば、リビングでお茶を飲んでから急に体調が変化したようだった。
目を覚ました美沙の目の前には数人の男たちが囲んでいた。
その横には店のあの女の子。
美沙は全裸にされ縛られて、その格好のまま写真を撮られ、男たちに抱かれた。
それ以降、写真の事で脅されて男たちの言いなりになった様で・・・

俺が見たような店で体を自由にされたり、男たちのクルマや部屋に呼ばれたり、
そしてこの部屋で体を自由に弄ばれて・・・
若い男たちは好きなように美沙を抱き、お金まで巻き上げた様だ。
美沙は中絶手術も受けていた。
男たちは美沙の体など気遣う事もなく、好きなだけ好きな様に抱いていたのだ。
俺は許せなかった。
あんなに優しい笑顔を持っていた美沙から笑顔を奪った奴らを。
でも、美沙は警察沙汰を嫌がった。
俺は何度も説得したが、美沙は“自分が悪い”と言い続け、
そして俺の前からも消えた。



美沙を失った俺は完全に廃墟のようだった。
美沙が会社を辞め地元に帰って行った後、周りの人間は俺を心配してくれた。
でも、美沙を失った事はあまりに大きい。
俺も会社を辞めた。
そしていつしか“復讐”が頭の中を埋め尽くしていた・・・
あの女への復讐。
美沙が心配し、苦労して何とか一人前に育てようとしたにも関わらず、
あの女は美沙を裏切ったどころか、美沙の人生をメチャクチャにした。
そして俺の人生まで。
俺は既にあの店を辞めていた女を必死に探した。
そしてついに、あの女がパブで働いている事をつき止めた。


俺は女を仕置きしてもらう為にネット掲示板を漁った。
そして依頼先を決め、50万円を用意して最後の調整をした。
先方のリーダー格の人間が、“あなたの怒りを晴らすなら、あなた自身も参加しては?”
そう言って来た。
俺は既に自分などどうでも良くなっていたし、それはチャンスと思った。
当日彼らが用意したワゴン車の中に縛り付けられた女が乗っていた。既に全裸にされ。
俺もマスクをつけた他の男たちに紛れ、女を抱いた。
嫌がる女に中出しし、最高に恥ずかしいであろう写真を沢山撮った。
そして全て終わっているにも関わらず、俺は思いきり女を殴った。
俺の人生をメチャクチャにした女を・・・



全て終わった。
もう美沙は戻って来ない。
俺の人生も終わった。






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