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「有より無しに焦がれて」





睦美と付き合ってもうすぐ1年、そんな頃の話。
睦美とは就職セミナーで隣の席になって意気投合、すぐに仲良くなった。
しっかり者・明るい性格・美人(少し)、友人からは祝福の嵐だった。
付き合い始めて気が付いた事だが、睦美は俺好みの美乳(巨乳)で、スタイルまでいい。
何の不満もない、自分でも満足しているつもりだったし・・・
ところがここ数週間、体の関係がない。そして俺の部屋で会う回数も減っている。
別に意識したわけでもないのだが、何故かテレビを一緒にみるだけで終わったり、
キスやハグはあるものの、その先に進まない。
だからと言ってお互いに気まずいわけでもなければ、特にそんな話にもならない。
洗面台の引き出しの中にある睦美の歯ブラシ、衣裳ダンスには睦美のお泊り着替えも。
睦美にしたって、もう彼氏の部屋に予備の下着を置く程の距離感になっている。
俺たちは自覚のない倦怠期なのだろうか・・・  そんな思いが過ぎった時だった。

「ねぇ、お姉ちゃんがこっちで暮らす事になったんだけど、引っ越し手伝える??」
睦美に言われた。
「こっちで暮らすって?  仕事変わるの?  手伝うのは別にいいけど・・・」
俺の返事。
勤務する会社を変わるわけでなく、その勤務地が変更になるという事だった。
妹、そしてその彼氏が暮らす街の近くで新しい生活を始めるという事だ。
特に理由は聞かなったが、俺には心当たりがある。
睦美から職場恋愛(上司との不倫)の事を聞いていたし、それが終わった事・気まずい事、
既にそこまで聞いていたから・・・
特別睦美に確認するまでもない気がした。
まだ会った事などない睦美の3才年上のお姉さん、
俺はその引っ越しを手伝う事になった。


その日はすぐにやって来た。自分の最寄り駅から二駅先の駅、徒歩5分のアパート。
住宅街の線路沿いにあった。
ところが・・・  その引っ越しの当日、それも依頼者である睦美が風邪でダウン。
主な荷物の持ち込みは引っ越し業者がやったものの、その後の片付け全般、
俺と睦美のお姉さんの二人だけでやる事になったのだ。

美緒さん。当日その場で初めて会ったその人。
何て言うのか・・・  睦美とは全く違う。兄弟・姉妹でも似ているケースもあるが、
美緒さんと睦美に関しては全く別人、血の繋がりを感じない程に似ていない。
睦美の方が美人だとは思うが、美緒さんも悪くない。
性格が全く違って、美緒さんはとても大人っぽくてアンニュイ、
嫌な感じな意味でなく、少しかったるい感じの仕草や喋り方をする。
“確かに・・・”  不倫していた事を生々しく感じてしまう雰囲気、
俺は勝手に納得していた。元気で明るいハキハキ系の睦美とは正反対だ。
でも、別に美緒さんが陰気とか暗いのではない。
笑顔が静かで、どこかで・・・ 受け止め包み込む感じの女性なのだ。
と言って・・・  睦美のやや肉付きの良い体型とは逆で、折れてしまいそうな程の
スレンダーな体型。でも、なのに弱々しさを感じさせるわけでもなく、
むしろ年齢にしてはしっかり者の睦美よりも、もっと大きなオーラを感じさせる。
少し不思議な女性。


「ありがとう。 睦美ったら無責任だよねぇ、彼氏君に仕事押し付けといてねぇ~」
静かに、でも俺をしっかり見てにこやかに言う。
細い体、背丈もそんなに高くない。もしかしたら睦美より小さいかもしれない。
でも、ちゃんと、それも睦美より遥かに大人の匂いがする。
と言うより、もう未成年の臭いなど完全に消え、大人の人妻・主婦たちに負けていない。
そんな落ち着きを感じさせる。でも、その顔は体型同様に細く弱々しいものなのに。
俺は大きい荷物を運び入れ、美緒さんの希望の場所へ移す。
美緒さんはこまごまとした物を振り分けて行った。
引っ越し、エレガントな雰囲気さえ漂わす美緒さんだがラフに、
体型通りのタイトで細いジーンズ、少し春先にしては暑さの感じる今日、
薄い文字の入った白いTシャツ姿となって作業に没頭していた。
「あれ・・・  床傷つけちゃったかなぁ~」
美緒さんは手持ちのタオルでフローリングの傷を擦っている。
その時だ、俺の視線の先に・・・
ブカブカのTシャツを着ているわけではないのに、美緒さんが細過ぎる事もあり、
それほど大きく開いているわけでもないが、胸元がしっかり見えてしまっていたのだ。
それは着けているブラジャーの全面、そしてそのブラジャーとの間に隙間が開き、
美緒さんの胸の先端部分まではっきり見えているのだ。
床の傷に集中している美緒さん、俺はそれをいい事に・・・

睦美と違って本当に痩せていて、睦美の大きく綺麗は一級品の胸を見慣れたせいか、
本当に可哀想なぐらいに、女性としては“貧相な”と言われるような胸だ。
俺が元々巨乳好きな事もあるし、本当に痛々しいぐらいに思うレベルの貧乳、
なのだが・・・
違う、いつもの自分が起こしそうなリアクションと違う自分がいる。
その胸、その胸の持ち主が誰であるのかがそうさせているのかもしれない。
大人びた雰囲気、アンニュイさが無の価値を有に切り替えてしまう。
グングン熱気で押して来るようなエロスでなく、その内面性にまで寄り添ったような、
肉体だけ分離される価値でなく、その人格そのものまでを欲しくさせるような・・・
俺は固まる程に見入っていた。それは胸元と言うよりも美緒さん全体を包むように。
突然美緒さんの顔が上がった、そして俺と目が合う。
俺はドキっとしたが、美緒さんはニコっと笑い、
「この程度の傷なら問題ないよね?!  忙しいんだっ、休んでる暇はないねっ(笑)」
俺の視線、その意味には全く立ち止まる事はなかった。

「少し休もうか・・・」
まだまだ日が少し傾いただけの、室内灯なしでは少し暗く感じる程度の午後の部屋、
埃を逃がす為に全開にされた窓の光を受けながら、静かでゆっくりした時間の中にいる。
「コーヒー?  お茶??」
美緒さんが二つの缶を見せて俺の返事を待つ。
「はい、コーヒーね?!(笑)」
自分では特別リアクションした覚えはなかったが、美緒さんは俺にコーヒーを手渡す。
確かに二つ見て選んだ、それは自分の頭の中で。そして返事をしようとした。
だが、美緒さんはその返事より先に反応していたのだ。
大人の女性を感じてしまった。自分より遥か年上の男性との愛の時間を過ごした女性、
俺ぐらいの年下男なんて、きっと分かりやすいのかもしれない。
“美緒さんが愛した男性は・・・  きっとこんなに気を回してもらってたんだろうなぁ”
羨ましさを感じた。そして美緒さんが過ごしたはずの愛の時間の生々しさも想像した。
そして・・・  さっき偶然に見てしまった乳房・乳首というリアル。
こんな静かな午後に、少しだけ薄暗い日中の光の中で男女として二人きりで存在している。
俺は一人勝手にモヤモヤしたものを抱えていた。


「さてと・・・」
美緒さんは低い脚立の上に座っていたが、飲み終わった飲み物を床に置いた。
その時、またあの姿を見せる。今度は腰を高い位置に留めたまま屈み、
大きく下に屈み込んだから、俺の真正面から大きく開いた美緒さんの首元が開き、
ブラジャーは一気に垂れ下がり肌から大きく開き、両方の先端まで完全に見えてしまった。
“美しい”  俺はこんな小さな胸に、それどころか下向きなのに高さのない“胸部”
そんな表現になってしまいそうな胸なのに、その胸元の直線的なラインに吸い込まれた。
スレンダーなボディ、そして大人びたほっそりした顔は顎先までシャープに美しく、
睦美にどっぷりと浸かり、睦美の肉体こそが正しい、昔からの自分の価値観が全てだと、
そう思っていた俺の頭の中を引き裂いた。
こんなラフな格好をしていても、引っ越し作業なんて場面でさえ、
美緒さんのそのアンニュイで色気のある雰囲気がこの場を支配している。
俺は再び固まった。動けない。
「どうした?  疲れた?! ごめんね、少し休んでて」
そう言って美緒さんは途中になっていた小物の仕分けを再び始めた。

本当に細い背中だ。大切な愛を壊し、一人傷心のまま離れた場所に来たと言うのに・・・
新しいスタートを自分のチカラでスタートさせようと頑張っている。
静かに見ていた。見ていたはずだった。
しかし・・・  俺は知らないうちに崩した正座の姿勢で片づけをしていた美緒さんの、
その真後ろに一人立っていた。美緒さんの後姿を包み込むように。
そして次に瞬間には美緒さんを後ろから抱きしめていた。
驚いたのだろう、美緒さんは少し“ビクっ”として、でも反応を気遣ったのか、
そのまま姿勢を動かさず、そして表情は緩め体の力を抜いて見せた。そして、
「どうしたの?  ・・・  睦美となんかあった?」 そう囁くように言った。
でも俺は、さらに強く抱きしめ、そして美緒さんの首元に頬を寄せた。
「ダメだよ・・・  コラぁっ、こんな事したら浮気だぞ!  睦美に言いつけるよ(笑)」
優しく笑って俺に気遣いながら俺の腕を解こうとした。
でも・・・  俺は振り向いた美緒さんの口を奪い、そのまま床に押し倒した。
「だめっ!!  やめてっ、  ダメだって!!」
言葉が終わっていないが、そのまま口をさらにキスで塞いだ。
そして、堅い床に美緒さんのか細い手首を押さえつけていた。

どれだけ抵抗されてもしつこくキスを続け、そして美緒さんの抵抗が止まった。
俺は美緒さんのTシャツを捲り上げ、そしてその生地の厚さが目立つブラを押し上げた。
少しも高さのない胸。いや、その輪郭に沿って少しだけ薄いラインがあるのかも・・・
小さな先端だけ、そこだけがその胸の存在をアピールしている。
その部分を口で愛した。そして俺の手でそれを掴む。
見た目にはまるで存在していないようなその場所、でも俺の手がそれを掴もうとすれば、
静かにそこに微かな盛り上がりを見せてくれる。
乳房と言うにはあまりに心もとない存在だが、その先端部分まで含めて愛せる。
そしてそんな乳房の存在も、美緒さんにとって少しも足を引っ張っていない。
それどころか、満ちあふれた乳房の持ち主の睦美に感じた事のない激しい思い、
始めて感じた不思議なものを俺に感じさせた。
美緒さんは意に反してレイプされているのに、それでも俺を受け入れている。
それが伝わって来るんだ。
こんなに華奢なボディの持ち主なのに、本当にその懐の大きさを感じてしまう。

俺はかなり強引に挿入してしまった。でも、諦めたようにそれを受け止めた美緒さん。
“俺の好きなようにさせた” きっとそんな言葉の方がしっくり来る。
そんな大きな女性の、そしてその華奢な体で俺は果てた。

「黙ってよう。事故だよ、私が悪かったんだよ、気にしないで。
    睦美とは今まで通りね。 今日の事はお互いに忘れよう・・・」
美緒さんは強引に、それも妹の彼氏に肉体を奪われたと言うのに冷静だった。
ある意味、俺は子供扱いされたのかもしれない。
その後、睦美とは自然にフェードアウトするように別れた。
美緒さんともその一回だけ、現実だったのかも分からない経験一回だけの関係。


不思議だ。 あれから長い月日が過ぎたと言うのに、美緒さんの事が消えない。
あれ以降に何人か付き合った女性、それも期間・熱量が遥かに超えていたはずなのに、
たった一人、美緒さんの事がいつまでも俺の頭から離れない。
申し訳ないが、みんなから羨ましがられ自分でも自慢だった睦美すら大きく飛び越え、
美緒さんだけが特別な位置に入り込んでしまった。

俺は今でも大きな胸の方が好きだ。実際、そのタイプの子とばかり付き合っている。
貧乳・微乳への興味??  それが・・・  美緒さんだからこそ、その想いが強い。
あのスレンダーな肉体、そしてその真逆な程に大きい女性の姿。
もうあんな女性と出逢う事などないのだろうか・・・




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