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「サ・イ・レ・ン・ト・デ・ビ・ル」





タバコの臭いも年季が入り甘臭くなっている。
埃っぽく、そして湿気の多いのはこれまた年季の入った空調のせいだろうか、
それとも昭和の古びたビル街、その1階特有のものだろうか。
車の全長2台分程の間口しかない5階建てのビル。
だからと言って奥行きがしっかりあるわけでもなく、各階が最低限の面積、
それを立体的に重ねて辛うじてスペースを確保しているこの店。
裏通りの路地の入口付近にある独立系のネットカフェだ。
二つ先の駅に姉妹店があるが、どちらももう古びているし、
ただただ料金が安い事、そして立地、それだけでもっている。
場所柄趣味・買い物目的の若者、それも遠征組(よそ者)が途切れる事のないこの街。
乾いた店員と渇いた客が視線を合わせる事もなく向き合う。
特別なサービスなど求めないだろうが、ゆえ、店員の質も悪い。

1階がフロント、そしてドリンクバーと雑誌のコーナーがある。
2階から4階がボックス席・リクライニング席・ごろ寝シート等、
訪れた利用者が消えて行く目的の場所だ。
もう色の変わったPC、今どき大きなマウス、そしてキーボードのボタンが大きい。
座席は破れているものが多いし、その破れもガムテープでとめてある。
薄暗い店内、一応禁煙席と喫煙席に分煙されているようだが、頼りない空調、
ボックス席の上に上がった煙はそのままゆっくりと漂い、やがて静かに広がって行くだけ。
都会をさまようネズミたちには丁度居心地が良いのかもしれない。
5階はスタッフルーム・事務所になっている。
そう、忘れていた、1階にまだあれがあった・・・
ターゲットの女性が現れた時にだけ、どこからともなく湧いて来るあれが出没する・・・
1階のフロント奥、細い廊下を少し曲がった先にあるコインシャワー室。
通りの音が中まで響いている小さな店内、
でも、コインシャワー室へ入り込んだ瞬間そこには静かな世界がある。
古びた建物、そのビル裏に突き出したような場所にあるそのシャワールームだが、
そこまでの廊下のせいなのか、正面・1Fフロアから少し曲がり入るせいなのか、
廊下を少し入った途端、その店内で感じていた騒音が嘘のように静かになる。
こんな狭くうるさい店の中にあって別世界がそこにあるのだ。別世界が・・・


見栄えは良いが茶髪で冷たい目をした店員。
どこまでもオタク臭が漂い、女の子がその視線を向けられるのも嫌がるような店員。
見事にその2系統の店員ばかり。
そして・・・  その中には外見どころでない、本当に悪い奴らがいる。
もっとも・・・  他の店員にしても了解済みのグルなのだが。
女性がコインシャワーの利用をする時にだけ内線が走る。
「シャワー入りまーす! あと、20番L・Fお願いしまーす!! オフでーす!」
“あと”以降は暗号もどき、まぁ店員たちはそんな遊びをやりがいにしている。
20番=20前後の女性、L=OL風(フリーター風→F)、F=Fカップ、
そしてオフ。オンはかわいい・美人系・ナイスボディ等の上物の意味、
つまり・・・  オフとはブス・デブ・ダサ女他、まぁ悪意を含んだ意味合い。
もし高校生に見えるぐらい若いフリーター風のFカップ美人なら、
“シャワー入りまーす! あと、18番F・Fお願いしまーす!! オンでーす!」
となるわけ。

そしてその後だ。そうして振り分けられた情報になんの意味があるのか、
言わずと知れた事、女が雑踏から孤立した場所で一人シャワーを浴びているのだから。
自分自身で施錠した密室の中、それもこんな場所に来てまでシャワーを浴びたい女、
どれだけその温水に酔いしれているだろうか・・・
もしかしたらこんな個室、いやらしい事でも考えて自分を解放している女もいるかのかも。
まぁそんなに長い時間利用できる“前提”ではないので、特別なものとは考え過ぎか。
でも、いずれにせよこんな場所でも流したい気持ちは持っていて、
そして古臭いこんなシャワー室で肉体にシャワーを当てるのは事実。
今どき固定式、それも昔の学校のプールに備え付けられていたシャワーのようなそれ。
ただレバーを回し、上から広がり落ちて来る太い線の散水を浴びるだけ。
自分の肉体を当てたい場所に向け、ただただそれを繰り返して洗う。
ところがそんな粗末なシャワー室のくせ、その面積が無駄に広い。
シャワーを浴びる床部分だけで2畳ほどの広さがあり、境があって、
その外に1畳ほどの上がり場兼更衣室のような物がある。
まぁ、脱衣カゴと丸椅子が置いてあるだけだが。

利用時間は20分という事になっている。混雑時は予約式。
利用料金は300円だ。
備え付けなのか否か、怪しいボトルのボディーソープ・シャンプーは一応ある。
クリーム色のバスカーテン、白系のタイル壁。
どちらも変色して褪せているが、元々の色合いのせいで暗くは感じない。
薄汚れ、やや震えて感じる縦長の蛍光灯も暗いわけではない。


「シャワー入りまーす! あと、25番L・Cお願いしまーす!! オンでーす!」
特定の店員たちのもとに内線が走った。
暑い時期・暑い日などで外回りの営業系女子が休憩に立ち寄る事もあり、
OL風も少なくないのだ。
25才ぐらいのOL風、Cカップぐらいの魅力ある女・・・
実際、肩までのセミロングの黒髪、リクルートスーツを感じる黒基調のパンツスーツ。
確かに立ち姿からは中肉中背、スッキリとした体形のおとなしめの顔立ちの美人。
飛び込み営業や保険外交のタイプでなく、顧客営業・注文取り程度なのだろう、
まったくガツガツした感じのない女性。
フロントでさらに300円の貸しタオルもレンタルし、
彼女はコインシャワー室に向かった。
エレベーターが一度5階に上がり、3階に停止し1階に降りて来た。
二人の黒服の男たちがフロントを横切り、コインシャワー室の方へ向かう。
既にフロントにある“給湯器使用中ランプ”は点灯中、女性はシャワーを使い始めた。
一方シャワー室へ向かった男たちは手前にあるリネン室の扉の中に入った。

2.3分、さっきとはまったく違う衣服に変わった男たちがリネン室から出て来た。
黒いトレパン、黒いTシャツ、そして・・・
シャワー室の扉の前に立ったと同時に二人して目出し帽をかぶったのだ。
そして静かにドアノブに鍵を差し込んでいる。
フロントはグルだ、合鍵をそのまま渡しているから何の苦労もない。
静かに慎重に鍵を差し込み、そして半回転まわして開錠。
今頃は一番気持ちよく体を洗っている頃だろうに。
きっと一人の時間・場所を信じて疑っていないだろう。

僅かに開いた扉から中を覗く男たち。
固定式というシャワーヘッドの形状、場合によっては背中を洗う時など、
もしかしたらこちらを向いているかもしれない。
まぁ、ここまで来ていればこちらを向いていたところで押し入るのだが・・・
今回はタイミングよくと言うか、頭を下げて髪を洗っているところだった。
男たちは静かにシャワー室の中に入り、必要もないのに鍵を施錠した。ゆっくり静かに。
女は気が付く事なく髪を洗っている。
男の横には丸椅子の上に置かれたカゴの中に脱いだ女の衣服が。
性格が出るのか、スーツのせいもあるのだろうが丁寧に置かれていて、
白いブラウスの上にサテン地の濃いパープルのブラとショーツが畳んで置かれていた。
男たちは各々その下着をとって顔にあて匂った。
さすがに外回りの女性、汗臭く、そしてショーツのあの場所はしっかり汚している。
中央縦状に茶色く広がり、よく見れば細かい固形物のような物が混じり生々しい。
ショーツを担当した方の男は無言で目出し帽のまま笑みを浮かべ、
その汚れた部分を舌でペロリと舐めて見せた。
もう一人の男も負けずにブラをトレパンの中に入れ、シゴく素振りを見せる。
気配に気が付いた女が驚いて“キャ!”っと声を上げた。

シャワーの音だけの世界、広めのシャワー室とは言っても浴室内、声は響く。
でもここはコンクリートビル、それも離れた場所。無駄に防音効果が高い。
中で出す大声もここだけのものだ。そしてそれも一瞬。
目出し帽を被った黒ずくめの男二人、いきなり施錠したはずの密室に入っている。
その事は当然として、全裸でシャワーを浴びている自分、それは驚くだろう。
そしてどれだけの恐怖心だろうか、でも声を出せたのはほんの一瞬だけだった。
男たちは自分たちが濡れる事など気にもせず、一気に女を押さえ込んだ。
そして片方が女を羽交い絞めにし、そしてもう一人がハンカチを女の口の中に押し込む。
面積のわりに垂れた胸が激しく上下する。
Cカップと言われていた中肉中背の女だったが、カップ自体はDまたはEかもしれない。
羽交い絞めにされて突き出しているのでそれがよく目立つのだ。
回り込んだもう一人が前からその胸を揉み上げる。
“う”う“う”ぅ“ぅ” ぅ“・・・”
嫌がって左右に体を揺さぶれば揺さぶる程、彼らは大喜びだ。
思いっきり摘むように鷲掴みされ、引き千切れんばかりに揉み壊しそうな勢いで弄ぶ。
髪を掴み上げ女の顔にシャワーを当て、男たちは苦しむ女を見て笑う。
そんな間にトレパンを下ろして、男は自分のモノを女の中に後ろから入れた。

“ううぅ、、んうぅ!! うぅぅうぅぅ!!!”
髪を掴み上げられ顔を斜めにして歪めながら抵抗しようとする女。
意地でも屈服するものか! と気合が伝わってはくるものの、それに何の意味もない。
やっとシャワーから外されたと思ったのも束の間、
目出し帽のまま男が激しいキスで女の口を塞いできた。
女は一息つけた瞬間に強引にキスして来る男に噛み付こうとする。しかし・・・
それが避けられたと同時、顔を殴られ、そして腹にパンチを入れられた。
顔がガクンと落ち、全身の力が抜けたように抵抗はなくなった。
それでももう一発同じ場所に男のパンチが入る。
裸の女の腹部に真正面から見事に入ったパンチ2発。
どちらも濡れた皮膚が発する軽い音・内臓に響くような鈍い音が入り混じり響いた。
女は広い床に寝かされ、そのまま全身にシャワーを浴びながら抱かれた。
薄く目を開けていて、シャワーの水だけでない、そこには涙も流れているようだが、
まったく女に表情はない。
激しく突き上げられ体が大きく揺さぶられてもまったく表情は変えない。

一人目が終わるとそのまま上半身を後ろから押し起され、
今度はそのまま終えたばかりの男のペニスが口に当てられた。
それでも反応がなく、そのまま口を閉じたままの女だったが、複数回ビンタされ、
痛みの表情と共に少しだけ開いた口をこじ開けられ、そこにペニスを押し込まれた。
“動けよ!”と何度も頭を殴られ、頭を押さえ付けられて強制的に前後させられる。
けっして睨みつけるような目ではない、ただ上を見上げて、
ずっと静かに自分の口の中にペニスを押し込んでいる男を見つめていた。
やがて無表情のまま口からザーメンを溢れさせる女。
激しい雨のように降り注ぐシャワーの舞い落ちる床面にそのザーメンが落ちて行く。
「今度は俺だよ!」と続けざまにフェラを強要され、相変わらず無表情のまま前後、
そしてやはり自分にさせている男の顔をずっと見たままだ。
後ろから激しく胸を揉まれようとも、表情を変えないまま前後させる。
いい加減になれば押し倒され、そのまま最初のように床でシャワーを浴びながら抱かれた。
そして横たわった姿を記念写真として撮られれば一連の流れは終わる・・・


目出し帽・黒ずくめと言ったところで、こんな特定の場所、それもフロント前を通る。
施錠したはずの鍵を開けられて・・・
疑いようがない“店員グル”の犯罪である事は分かっているだろう。
しかし彼らは同じ事を続けている。つまり発覚していない、又は問題になっていない。
つまり悪戯された女性たちが泣き寝入りしてしまっているわけだ。それも何人も。
そして激しく暴力を受けたり、撮影され金品まで盗まれたりもしているのに。

どうしても消したい記憶。自分さえ無かった事にしてしまえば大事にならない。
自分に悪戯をした男たちを表舞台に引っ張り出して裁かせるより・・・
悲しくもそんな泣き寝入りが今日も彼らの欲望を満たさせる。




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