「突然、今日から義母が僕の先生」
「聖也くん、大変だと思うけど気をしっかりな。前を向いて歩くんだぞ」
「何かあったらおばさんたちが力になるからね」
そう言っていたけど・・・
もうすぐ、春になれば高校2年生になろうとした2月の初め、母親を亡くした。
仕事先で交通事故に巻き込まれて、まだそれを信じられないまま。
大人たちが僕に直接声を掛けて来るのには理由がある。
僕は母と二人で生活していた。そう、母子家庭。
僕が中学に上がる前、父は母の下から去って行った。
それすら実感のないままだった出来事で・・・
その疎遠になってしまった父も、去年、風の便りで訃報を受け取ったばかりだった。
父は若い女性と再婚して2年半しか一緒にいないまま消えて行ったらしい。
細かい話を高校入学直後に母親に説明されたのも、まだ最近の記憶だ。
父さん、僕を置いて出て行った事、どうしても許せないよ。
母さん、僕だけを残してどう言うつもりなの?
悲しみを感じる事さえ出来ない自分がそこにいた。
母の件が一つずつ片付いて行く。“手続き”という作業で存在が消えて行く・・・
そして、優しかった大人たちの表情は変わって行った。
僕を見る事なくコソコソと大人たちで話すようになり、母の書類探しばかりになり。
アパート暮らしの母子家庭。財産なんてあるわけがない。
きっと財産があったなら、もっと“優しい目”で僕を見ていたのかもしれない。
最後の方は露骨だった。
「お前、綺麗事じゃ済まないんだぞ! 聖也の前にうちの事を考えろ!!」
「長女なんだから姉さんが引き取るべきだろう!」
「離婚して出て行ったんだから、聖也を引き取る責任なんてないでしょ?!」
2階までしっかり聞こえるよ。僕の心の中にまでしっかり届くよ!
大人たちは昼でも夜でも言い合い、僕の前でもお構いなしになっていて。
頭がおかしくなりそうだった。誰も信じられない。早くこの世界から逃げたかった。
そんな状態が2ヶ月ほど続いたある日、もう線香をあげに来る人も途切れたその時期、
一人の女性が僕が預けられていたおじさん(母の兄弟)の家にやって来た。
その日はすれ違っただけで、そこで何が話されたのかも知らない。
僕がその事・結果を知ったのは全て決まった後の事だった。
その人は“日下部玲香”という女性で、この地から遠く離れた場所で先生をしていると。
母と別れた、母と僕の前から消えて行った父の、後に奥さんになったその人だった。
その人が今さら・・・
父には遺言があったらしい。
その女性は体に幼い頃の後遺症があり、子供が出来ないそうだ。
父は、その女性と一緒になった後も、
““私の子供は聖也だけだ。身勝手な話だが、
私の子供であり、玲香の子供とも思ってほしい。こんな事を頼む事は筋違いだが、
もし、もしも私に何かあった時、そしてもしも聖也が大変な状況にいたならば、
お前が第二の母となって自分の子供の様に受け入れて欲しい。頼むな!“”
そう日下部玲香という女性に言ったそうだ。
それも晩年に病状が悪化して意識が混濁した父が、すがる様に繰り返したらしい。
父親は玲香さんと言う人を溺愛していたようだし、また、
玲香さんも年の離れた僕の父を本当に愛していたらしい。
きっと、そんな事がなければ財産などないこんなところにやって来ない。
自分が周りの年上の大人たちから冷たい視線・言葉を受ける覚悟をしてまで・・・
年齢は29歳らしいが、先生という職業以上に落ち着いた感じの、でも、
“正しさ”“信念”を強く感じさせるような人だった。
後で聞いた話だが、離婚した父と結婚した形は作られながらも、
学校関係者に何度も考え直すように言われ、親族・友人とも疎遠になったらしい。
そうまでして父を愛した人。
亡くなった母を思えば複雑だが、父は幸せ者だったのかもしれない。
“引き取られる”って言葉、ペットや不用品に使うような言葉に思うけど、
僕はもう既に一度、そして今回二度目のその時がやって来た。
不安に決まっている。見知らぬ場所、そして見知らぬ人のところなんかに行きたくない。
でも、もう押し潰されかけていた僕は、逃げる事しか出来ない。
選択とか判断じゃなく、ただ黙って大人たちのその決定に従った。
そして何も見えないまま、その新しい生活がスタートした。
田舎だ。冬でも雪景色なんてテレビの世界だった僕にとって別世界。
パソコンの写真を事前に見せてもらっていたけど、それは春から秋のものだったのか、
緑の山々、川、自然に溢れた地域だとは理解していたけど・・・
最初に立ち寄った店が衣料品店で、最初に防寒具を買った事でもそれがわかる。
“新しいお母さん”の運転する軽自動車に乗って、雪景色の中を走る。
その人は僕の顔を見る事なく、前を見て運転しながら時々何かを聞いて来た。
“お母さん”にはどう見ても若く、下手をすればお姉さんでもいいのかなぁ・・・と。
慣れているのかこんな雪道でも普通に運転している姿が少し逞しく見えた。
“また”アパートでの生活が始まる。でも、少しだけ新しい建物な感じがするが。
階段下のポストには“木下玲香”と貼ってある。
木下は僕の旧姓、つまり父親の苗字だ。玲香さん(新しい母)はその視線に気付き、
「木下玲香なんだけど、仕事の関係もあってややこしくてね・・・」
「職場とかでは日下部玲香っていう旧姓のままにしてるの」
そう言って来た。僕は自分の苗字が変わるっていう大変さを別の意味で知っていた。
だから、“また再び変わるのか・・・”とそんな顔になっていたと思う。
先生という職業柄なのか、そんな僕の表情の変化にもすぐに気付く。
「苗字か・・・ いいよゆっくりで。どうするかはこれから考えよう!」
そう言って先生っぽい笑顔を見せ、僕を部屋に招き入れた。
大急ぎで作った様な空間があちらこちらにある。そしてその分は他の場所に山積みで。
「何だか片付けたって言うより、むしろ散らかってる?! 片づけ苦手なんだよねぇ」
少し人間味が出る様な、そんな照れくさそうな表情はしっかり者のイメージから意外で。
「あっ、洗濯物出しっぱなしだ」
洗濯物に雪が被っていた。でも、玲香さんが慌てたそんな事とは別に、
僕には違う不安の始まりが動き出したような、少し黒い雲が張り出したように思えた。
そう、その洗濯物の中には紛れもなく若い女性の下着も混じっている。
これから毎日、この女性と暮らし、当たり前に自分の目の前にこの下着がある事になる。
僕はもう高校生だ。大人の男と変わらないよ。
先生ならそのぐらい分かっているはずなのに・・・
ここに来る途中の車の中で初めて知ったけど、僕が転校する先の高校は、
新しい母・玲香さんが生徒たちを教えている高校だと知った。
都会ならあり得ない気がするそんな事も、こんな田舎では近くに高校がないからこうなる。
どんなに田舎だからって、きっと揶揄われるに決まっている。
自分だってそうだろ?! 玲香さんだってきっとやり難いはずなのに・・・
僕にはまだ分からない。亡くなった父への愛、その為にこんな事を出来る玲香さんが。
まったく会った事さえ無かった高校生男子と新しい生活を始める事を選んだ玲香さんが。
最低限の荷物だけ届いていて、後は折を見てという事になっていた。
ここに、“以前、年上の男性と暮らしていた”という面影は確かに残っている。
そして、まったく違う匂いを感じるこの部屋でありながら、でもどこかに父の匂いがする。
そう、もうとっくに忘れていたはずの父の匂いが確かにした。
その事だけが、僕に小さい安心感を与えてくれた。
さぁ、僕の新しい人生が始まる。今は何も見えないけど。
この女性と、玲香さん? お母さん?? 一緒の生活が始まる・・・
まず学校への登校がスタートするまで数日間の猶予があった。
それはその前に玲香さんとの生活に慣れる為の準備期間という事でもある。
先日まで“年の離れた他人の女性”でしかなかった人との生活。
29歳女性と高校生男子との二人っきりの生活。緊張する。
「私、料理下手なんだよねぇ~ お父さん、料理上手でさぁ。美味しかったなぁ~」
そう言われて、父の料理が美味かった事を思い出していた。
「ねぇ、聖也くん・・・ 聖也くんかぁ。聖也、、? お母さんみたいっ(笑)」
「ごめんごめん。まだまだ無理があるね。当分は聖也くんになっちゃうかなぁ・・・」
「でも、怒ったら“聖也!”になると思うから覚悟してね!」
「それにぃ・・・ あんまり痩せないでよっ、私の料理の腕前が疑われるから!」
玲香さんは時々先生みたいに、そしてお姉さんみたいに楽しく話してくれた。
夕食に出された料理・・・ 確かに少し微妙だった。
玲香さんの笑顔に少し明るい光が見えたかと思えば、また黒い雲はやって来る。
僕に気遣っているのだろう、玲香さんは着替える時に隣の部屋の隅で着替える。
お風呂は僕がもう休むような時間になって入っている。
でも、母親との生活の時には気にしなかったトイレの中のあれとか・・・
洗濯物だって、それが家族ならば当たり前に干してあるものなのに・・・
こっちに引っ越してくる時にエッチ系の本やDVDなどは大半処分した。
だから余計に、周りに何もなくなっただけに目の前の景色一つ一つに目が留まる。
母が若く・他人というだけで大変な事になった。
そしてまだまだ不慣れな共同生活のまま、ついに学校への通学も始まった。
行く先が同じ。そしてここは交通手段が不便な地域。
母であるその人の横に乗って同じ行く先へと向かう。同じ場所に降り立ち、
一方は教壇に、そしてもう一方は教わる側へと。
学年が違うので担任は回避されたが、専任科目では母の授業を受ける事が回避できない。
小さい学校だ。先生の数が知れているのだから仕方のない事なのだが・・・
もうみんな知っているはずだ。きっと保護者もみんな知っているだろう。
きっと若くても、厳しい結婚、そして短い期間での別れ。
母・玲香さんは強い気持を持っているのだと思う。でも僕は・・・
案の定と言うか、転校生というだけで珍しい田舎なのに母が先生だなんて。
玲香さんは先生としてある程度のキャリアがあるから、意外に涼しい顔で教壇に立つ。
でも僕は、毎日揶揄われる。特に見ず知らずの上級生の連中から。
「日下部先生の裸、毎日見れんの? 羨ましいぃ~ 俺も見てぇよぉー!」
「玲香ちゃんと一緒に風呂とか入ってたりして。今度玲香ちゃんの下着持ってこいよ!」
周りにクラスメイトがいる状態で堂々と言われる分には、それは苦笑いだけで済む。
上級生たちのそれがまだ軽いうちはそれで何とか・・・
玲香さんは良い人だ。母親に向かってとしても先生に向かってとしても失礼だけど、
でも、素敵なお姉さんの様な存在で、学校の教壇に立つ時には少し厳しく煩く、
大人びた怖い女性にさえ見える。でも、
部屋にいる時の玲香さんは“かわいい”と感じるような女性だと思う。
向かい合って食事をし、洗濯物を干し・部屋を掃除しキッチンに立ち、
そんな玲香さんを見る時間が長くなるほど、何て言うんだろう・・・
少し難しい、言葉にするのが少し躊躇われる様な気持ちが膨らんでもいた。
“母親なんだ、この人は母親なんだ!”
そう自分に言い聞かせる様になっていた。それは玲香さんを見ている時間が長いから。
部屋での玲香さんと学校での玲香さんをどちらも見てしまっているから。
そして、先輩や一部の同級生には露骨で恥ずかしい玲香さんの事を日々言われているから。
意識すればするほど、玲香さんが母親でも先生でもない存在になって行く。
玲香さんは教育のプロだ。僕の表情の変化も見ていて、
「大丈夫? 無理しないでね。私は職業だし親の責任なんだから。何でも言って!」
見事なタイミングでちゃんと言っていてくれるのに・・・
だけど、自分の恥ずかしい気持ちの事まで知られるのは、その勇気はない。
だって、それは誰か他人の事じゃなくて、母であり先生である玲香さんなのだから。
寄り添って心配してくれるほど、苦しくなって何も相談出来なくなっていた。
ある日の午後の最終授業終わりの事だった。
先輩数人がチャイムが鳴り終わる前に僕たちの教室に入って来た。
偶々先輩たちの授業の終わりが早かったのだろう。
ちょうどその最後の授業をしていたのが玲香さんだった。
「君たち何してるの?! 授業まだ終わってないでしょ!」
普段僕たちに怒る時より少し、今日の玲香さんは強い言葉ときつい表情だった。
いつもなら笑って冗談でも言いそうな先輩たちもそこに反応したのか、
「うっせぇな日下部! こっちはちゃんと授業終わってんだよ!!」
大きな声が返って来た。
「あなたたち何? 先生に向かって何言ってんの?!」
玲香さんもいつにない顔を赤くするほどの激高ぶりで、僕たちは静かになっていた。
それでも中に入って来た先輩4人と玲香さんの言い合いは続き、
「お前子供学校に連れて来て恥ずかしくないのか?! やっちゃった男との子供だろ?!」
「そうだよなぁ、教育に悪いよ。2年生には刺激的過ぎるだろぅ!!」
玲香さんのいる教壇を囲むように激しい声で捲し立てる。
玲香さんも、
「教師に何言ってんの!! あなたたちに関係ない事でしょ! いい加減にしなさいよ!」
玲香さんが怒鳴っているのを初めて見た時だった。
それでも続き、
「好きな男とセックスに狂って出来た子供があれで~す!!(僕を指さした)」
「教師面して、やりてぇ事やってるだけの変態のくせに偉そうな顔すんじゃねぇよ!!!」
「子供ともやっちゃってんじゃねぇの?(笑)」
最後の言葉が言い終わった方が早かったのか、その先か、
玲香さんは思いっきり強く、その言葉を言った生徒をビンタした。
「てめぇ・・・ 許さねえ!」
ビンタされた生徒は玲香さんを睨みつけたが、ここまで騒ぎになっていた事もあり、
聞きつけた先生が教室にやって来た。
「何やってんだお前ら! 何があったんだ?!」
五十嵐先生(ベテランの男性の先生)が先輩たちに聞いた。
「こいつ、日下部が俺のこと叩いたんですよ! 教師って暴力もありなんですか?!」
ビンタされた先輩が大声で五十嵐先生に言い、怯えた教室の生徒に確認する、
「見ただろ! 嘘じゃないよな?! 本当に叩かれたよな?!!」
先輩から大きな声で同意を求められ、みんなは静かに頷いた。
「とにかく職員室に来い! 日下部先生もいいですね?! お前らはこのままな!」
五十嵐先生はそう言って4人の先輩と玲香さんを職員室に連れて行った。
僕たちは代わりの先生が来るまで待って、そのまま下校になった。
何も出来ないまま考え事をしながらバスで部屋に帰った。
玲香さんが部屋に戻ったのはいつもより2時間ぐらい遅い時間。
「ごめんねぇ、やらかしちゃって。電話すら忘れちゃった、私。 お腹空いたでしょ?」
僕の顔を見ずに明るい口調で話すけど、どうみても泣いた後の顔だと分かる。
しっかりとしたタイプで、泣く様なイメージの無かった人が・・・
本当にどちらの表情も初めてみた玲香さんだったし、あの場にいても味方にもなれない。
僕を守ろうとして迎えてくれた玲香さんが僕の為にあんな事に。
「処分されるかなぁ・・・ まぁ、ちゃんと謝ったし。後はねっ、、」
力一杯笑顔を作っている様だった。きっと僕を不安にさせない為に。
処分は検討中の様だが、とりあえず明日は休むように言われたそうだ。
一人学校に行った。クラスメイトは昨日の事に触れない。
午後の授業も終わり、何とか一日を乗り切ったと思ったけれど・・・
校舎の出口の前に先輩たちが待っていた。
「ちょっと付き合えよ・・・」
校舎裏に連れて行かれ、昨日の4人のうちの2人と、違う先輩3人で合計5人。
“殴られるのかなぁ・・・”
怖くて仕方ないが、もう覚悟を決めていた。だけど・・・
少し違う。穏やかと言うか、怒っている感じじゃない。
それは後に分かる事になる。
「日下部、昨日うちに来たんだぞ、教頭と一緒に。ウチの玄関で土下座したよ。
“申し訳ありませんでした。教師は私の生き甲斐です、続けさせて下さい!”だって!
涙流して頭を床に擦り付けてよ。偉そうに怒鳴ってたくせに。笑っちゃうよな。
でさ、許すかどうかはさぁ、俺も親も、他の連中もさぁ、みんな検討中なわけ。
つまり、日下部、それと・・・ お前の態度次第なんだよ。
日下部が教師を続けられるかは俺たちが許すかどうかなの。分かる?!
俺らが納得すれば教師を続けられるんだよ、その生き甲斐とか言ってるね」
穏やかな口調だけど、その意味はまるで奴隷への承諾のようだ。
でも、僕は玲香さんを辞めさせる事だけは避けたかった。
その場に跪き、“ごめんなさい、許して下さい!”と頭を下げた。すると、
「頭上げろよ。お前に頭下げられたって全く得しないしなぁ。やったのは日下部」
「お前、日下部のこと助けてやりたいか?」
先輩にそう聞かれ、「助けて下さい!」と僕は答えた。
少し間が空いて、静かな笑い声がそこに起こった。
「そうかそうか、良い子だ、簡単な事だよ。日下部の下着持って来い!」
“えっ?!”と僕が顔を上げると、
「助けたいんだろ日下部を。あいつの下着持ってくるだけであいつが教師出来るんだぞ」
「まぁ無理にとは言わねぇよ。あいつが教師を辞めるだけの事だからな」
助けたかった。玲香さんに教師を辞めて欲しくなかった。
僕がただ玲香さんの下着を持ち出す事で玲香さんに先生を続けさせる事が出来るなら・・・
僕は持ち出した。玲香さんのクローゼットの中から言われた様に上下セットで。
そしてそれを先輩の家に届けた。
先輩の部屋に案内され、そこには先輩の仲間たちがたむろしていた。
「へぇ~ 日下部やるなぁ。30が近いのにこんなお洒落なの着けてるのかよ。
やっぱり淫乱なんじゃねぇの。お前、本当は日下部とイイコトしてんじゃねぇの?!」
先輩たちは僕を囲んで笑う。
そして、僕が玲香さんの下着を差し出したところをスマホで撮影していた。
「やめて下さい!」
そう言っても、もう遅かった。
「頂きぃ~ 自分の母親、それも教師の下着を持ち出してばら撒いたところー!!
男を奪った淫乱女教師はこんな下着を着けてま~すって見せちゃうか?!(笑)」
自分が愚かだった。先輩の目的はこれだったんだ・・・
静かに部屋に帰った。もう頭の中はパニックになっていて・・・
でも、玲香さんはクローゼットの異変に気が付いていたようで、
「ねぇ、私のクローゼット、何か探した? 探し物なら言って。無ければ買うよ」
そう、何が無いのかは知っているはずなのに、僕を責めずにいようとしている。
でも、今は下着を触ったなんてレベルの次元じゃない事になっているんだ。
とぼける事しか出来なかった。“知らない・・・”
少し気まずい雰囲気になるのは仕方ない。どうしようもない。
次の日はそのまま過ぎ、そして玲香さんが再び学校に向かった日・・・
(そこで起きた事)
玲香は再度の謝罪を求められ、生徒の家に呼ばれた。でもそこには・・・
その生徒は“先生の都合が悪くなって別の日になった”と親に嘘をついて外出させ、
一人で謝罪に訪れた玲香は生徒の部屋に通される。
そこには大勢の3年生が集まっていた。部屋の中心に押し込まれ、そして囲まれ、
聖也が玲香の下着を差し出す画像・映像を目の前に突き付けられた。
「何?? えっ、聖也くん・・・ あなたたち何したの?! 何させたの?!!」
これだけ盛んな男たちに囲まれても、恐怖よりも聖也の母親であろうとした。
それは間接的に、亡くした愛する人への強い想いに他ならない。
そんな事など知らないだろう生徒たちは一層の謝罪を求める。
“この画像が出ると聖也くん、もう学校どころじゃないね”
“”どうしても先生を助けたいんだってさ!“”
この二つ、特に後の言葉を前にしてはもう玲香は自分を無くしてしまった。
自分を助ける為に必死で玲香の下着を持ち出したのだから・・・
その聖也を違う目で疑ってしまった自分もそこにいたから。
「先生、服脱いでよ。無理にとは言わないよ。聖也くんは先生を助けたけど・・・」
黙って下を向くしかない。防戦一方の状態だ。
脱がされるのではなく“自分で脱ぐ”という事。屈辱以外の何物でもない。
でも、そんなプライドなんかより、今は聖也を疑った自分を恥じていた。
上着を脱いで足元に置き、静かに下着姿になった。当然の様にそこで止まる。
目上にいても、一度引いてしまえば、もう一気に入り込まれてしまうものだ。
羽交い絞めにされて脱がされ、撮影されてしまった。
そしてそれで終われればまだ良いのだが・・・
女教師の生の下着を共有してテンションを上げていた生徒たち、
その目の前で生の肌を見せておいてブレーキがかかるはずもない。
ハイエナの集団に襲われた様に剥かれ、30前の婚姻歴のある女性がなす術もない。
「俺にも触らせろよっ!!」 「日下部の裸、最高っ!」 「柔らけー!!!」
何本の手が玲香に触れているのかが分からない様な状態になった。
きっと少し甘く見ていたのかもしれない。まさか本当に“行為”までやられてしまうとは。
普段学校で支配下にある生徒たち。多少生意気とは言っても、最後には抑制が利くと。
でも違った。
まだまだ子供の延長に考えていた少年たちは立派な男そのものだった。
自分が知らない、経験した事の無いような激しい扱い・そして手法で教師をカラダを抱く。
ただただ普通に力づくで犯されるだけならまだしも、
口でやる事まで要求してくる。
必死に抵抗したところで決め台詞が耳元に落とされる。
“この画像が出ると聖也くん、もう学校どころじゃないね”
“”どうしても先生を助けたいんだってさ!“”
動けなくなった隙に口の中に押し込まれてしまい、吐きそうな程に奥まで押し込まれる。
周りの生徒たちもどこで覚えたのかアダルトビデオの影響だろうか、
玲香の空いている手で自分のペニスを掴ませた。
本当ならこんな事に絶対に従わない教師だ、玲香は。
でも、今は母親になってしまった。子供を囚われてしまった母親だ。
裸で教え子のペニスを両手に持ち、口に入れられ、もうそれは教師じゃない。
生徒の前で生徒とSEXをし、それを周りに見せ・・・
永遠抱かれた様に感じたはずだ。休む間もなく抱かれ続ける経験などないだろうから。
もう抵抗どころか動かなくなった玲香を少年たちは力ずくで移動させ、
そこに乗り続ける。意識があっても反応しない女教師は犯され続けた。
ハイエナたちが腹いっぱいになって食べ残しを捨てる様に、玲香は解放された。
下着を探し着ける事も出来ずに、その場にあった上着・スカートを拾って、
裸のままコートに包まって逃げる様に自分の車に逃げ込んだ。
少年たちにされた生臭い臭いをそのままにして帰る事も出来ず、
途中に停めた車の中で必死に自分の体を拭いた、泣きながら・・・
心配しているであろう聖也を想いながら携帯を見つめ、でも余計に涙が止まらない。
ハンドルに顔を埋めて、玲香は必死で冷静になろうと疲れ切ったカラダで伏せていた。
そしてやっと、涙の勢いが弱まって、運転できる気力だけを絞り出して家路についた。
大切な人からの預かり物である聖也の待つ部屋へと・・・
玲香さんが遅い。7時を過ぎても連絡はなく、あっという間に8時。
もうすぐ9時になろうとした時、玲香さんの車の音が聞こえた。
中に入って来た玲香さんはすごい勢いで鍵を閉め、そこに座り込んだ。
泣いている・・・
コートの下のスカートがひどく破けていて、何かあった事はすぐに分かった。
暫く玄関で泣いて、静かにそのままシャワーに向かった。
その途中で見た玲香さんは無表情だったが、確かに頬のあたりに傷がある。
それに、髪はひどく乱れていて。
シャワーも長かった。やっと出て来た玲香さんは髪を乾かしながら、
「私、学校辞める。心配しないで、何とでもなるから。この町から出て行こう」
全てが洗い流されたようにしっかりと僕に告げた。
でも、夜中には玲香さんの眠る部屋からすすり泣く声が聞こえて・・・
何があったのか、僕は具体的な事を知らないまま玲香さんと違う土地に向かった。
玲香さんは学習塾で講師の仕事を始め、僕も遅れに遅れた受験勉強に打ち込んだ。
出逢った時の、そして学校の先生として教壇にいた玲香さんはもういない。
そして、その時にいた“日下部玲香”も変わってしまった。
でも、玲香さんの事が好きだ。僕を守ってくれた玲香さん、彼女を、
“母親を守ろう”だなんて変な話だけど、僕は守って行く覚悟を強くしていた。
二人だけの家族だから・・・
最後までお読み頂きありがとうございます!
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