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「琥珀色の記憶」





琥珀色 ・・・  透明感のある、鉱物である琥珀のような色。
         黄色ベースでありながら、オレンジやブラウンに寄った色合い。



「久しぶりだね?!」
駅で、ただそれだけの言葉、彩夏(アヤカ)さん。
特別な関係であった事など嘘のようだ・・・
スーツを着た僕に気を使ったのか。違う、彩夏さんはそんな人だ。
悪い意味でなく、晴れた午後に吹き抜ける海風のように清々しい女性だと。
どんな濃密な時間も、そして必死だった時間すら今は嘘のように思える。
それぞれの時にそれぞれの立場で向かい合った二人。
ほんの数年前の事なのに、何故だろう、何とも言えない懐かしさが込み上げた。

午後からの出社だった。こんな時間に駅にいる事は滅多にない。
数分、いくつかの言葉を交わしたはずなのに記憶が・・・
彩夏さんは友人に会う約束らしく、すぐにやって来た下り電車に。
そして上り電車待ちの僕は何故か脱力感に襲われ、ベンチに沈み込んだ。
自分を襲った脱力感の理由を探していた。
それは彩夏さんとの記憶を遡る事、そう、あの甘くほろ苦い記憶を遡る事になる。


せっかく早めの時間に出たと言うのに、気が付けば2本見送り、
むしろ会社到着にはギリギリの電車になってしまった。
駅のベンチから電車のベンチシートへと座面の硬さ・色合いが変わったと言うのに、
考えている事はずっと続いていた。はぁ・・・

彩夏さんは彰人(アキト)のお母さんだ。彰人とは高校の時に知り合い親友になった。
同じクラスになり、そして同じサッカー部時代を送る事になる。
彰人は小・中学時代の7.8年間をアメリカで過ごし、そして帰って来た男。
LAやサンディエゴ周辺を数度引っ越しながら暮らしていたらしい。
お母さん(彩夏さん)が西海岸のリゾート地に友人と訪れた旅行で、
今は別れてしまった元旦那さんと知り合い、その後紆余曲折あって結婚したそうだ。
元旦那さんはメキシコ系アメリカ人で、カリフォルニア州の公園管理の技師。
ただ・・・  特別はっきりした理由は聞いていないが、二人は離婚を選んだ。
彰人の中学の終わりに日本に帰って来て、手続き上は高校入学後に離婚。
でも、高校入学直後から彩夏さんの事は知っていたけど、元気で気持ちいい人だった。
別れを選び子供を連れ帰国、そして面倒な手続きなどをしていた時期なのだが・・・
僕は憧れていた。僕には兄貴がいる、だから母親の年齢は上だし、
何て言うのか・・・  僕の母親は生粋の日本人的母親なタイプ。

彩夏さん。彩夏さん・・・
太陽のような人。別にギラギラと照り付けるわけでなく、時間が揺らがない人。
彰人の家に行かなくても、学校で会っても西海岸の風が吹いているような。
ビジュアルは勿論大きいし、先入観や特別意識も確かに大きいと思う。
褐色系の肌、髪の色も茶系ではあるが、日本在住女性の染めるような不自然さがない。
服装にしても明るいトーンの物を自然に着る事ができる感じ。
自分の母親には絶対あり得ないし、まぁ、年齢も母親同士一回り違ったはず。
日本から出ようなんて考えない、そして見るからに日本男児な父を選んだ僕の母親。
それに比べ彩夏さんは海外に旅行に出て、そこでフィアンセとなる外人男性を見つけ、
周囲の反対を恐れる事なく自分の意思を通した人だ。
例え別れる結果となっても、まったく悲壮感なんて無いし、
自分で選び、自分で別れを選んだ覚悟・潔さはそのままライフスタイルになっている。

出会った頃、離婚直後の彩夏さんはセミロングだったが、その茶色の入り方、
それがまだまだ海外の雰囲気を引き摺っていた。
その後ショートに近くまで短くし、より明るい色になったものの裾をすいたせいか、
まるで雑誌に出て来そうな少しギャル系の女子高校生モデルのような・・・
綺麗だった。親友の母親だと言うのに、正直“ファン”のような視線で見ていた。
元々綺麗な人が髪型までショーモードにデザインされれば、ヘアー雑誌レベル。
その頃、“良いなぁ~”と思っていた気持ちから、“好きだ”と自覚する事になる。
話し方・仕草・服装、相手との距離感から生き方までの全てが素敵に思えた。
彩夏さんへの想いとは関係なく彰人とは親友だったから、家に行く事は普通なんだけど・・・
他の家にはない居心地、外国の雰囲気が繁栄された空間、そして彩夏さんの存在。
あの家に行けば特別な時間を過ごす事になる。特別な気持ちになる。
素敵な時間が続き、3年間の高校生活は充実した。
でも、彰人が突然アメリカ留学を決める。父親のアドバイスもあったようだ。
少し信じられなかった。学校・部活、そして僕とも楽しく遊んでくれていたし、
そのまま日本の大学に進学すると思っていたから・・・
彰人には彰人の考え方があるのだろうし、彰人にもまた父親への思いもあるのだろう。
3年生の夏休みに入ってすぐ、僕は彰人から留学の話を“軽い話”として聞いた。
彰人はサッカーのスタイルもそうだが、僕なんかとは違いドライで現実主義。
さらに、一番大切な部分以外は自由度が高く、可能性に縛られない。
アメリカ生活、父親、その血は間違いなく流れている。
また、彩夏さんという母親もそれを笑顔で見ている人。そんなところも素敵に思う。

その夏を忘れない理由がもう一つある。
夏休みもある程度過ぎ、長い休みの有難さも中弛みしていた時期だった。
彰人の家に行き、彰人の部屋でゲームをしていた。
二人が一つのゲームでそれぞれに結果を出し合って対戦していたが、それが各々長い。
自分の番が凄く長くなり彰人の時間も長くなる事が確信できたので、
ゲームを彰人に変わり、僕は我慢していたトイレに駆け込んだ。
彰人の部屋のある二階のトイレを利用したが、
喉が渇いていたので飲み物をもらおうと階段を下りてキッチンに向かった。
「あの~  飲み物を・・・」
返事がない。彰人の家には何度も行っていたが、いつも彩夏さんが部屋に届けてくれる。
自分で飲み物を取りに行った事がなかったし、少し勝手が違う。
他人の家の冷蔵庫を勝手に開けるとか、僕はそう言うことが苦手なタイプで・・・
でも、いるはずの彩夏さんがいない。僕はキッチンを出て諦めて二階に上がろうとした。
キッチンから二階へ上がる階段の動線上、行き過ぎ掛けたが不意に立ち止まった。
“今過ぎた所・・・”
僕は数歩だけ引き返した。通路の数メートル先、灯りがついている。電球色。
音。プラスチックや金具が壁に当たる音、床の音もする。
少し籠った音で、さらに扉の奥から聞こえるような。

無意識? 無意識のようでいて繋がっているのかもしれない・・・
そっちに歩いているし、数メートル近づいて少し視界が変わり僕は確信する事になる。
角に近づいた時、脱衣かごが見えた。
鮮明に見えなくても、一番上に堂々と置かれているそれを見れば一目瞭然。
立ち止まり唾を飲んだ。もう、音はしっかり聞こえている。
シャワーの音だ。そして僕の目の前に見た事もないような紫色のサテン地のブラジャー。
無雑作に載せられたようなそれは、肌を包んでいたであろう内側を上に向けて・・・
そのブラジャーの内側の生地を見たまま数秒止まってしまった。
そして・・・   静かに視線を右方向に向ける。
曇りガラスの先に全身のシルエットが映っている。彩夏さん・・・
自分で意識したつもりなどないのに、僕の手は少しだけブラジャーの方に伸びていた。
でも、“ガタン”とガラスの向こう側から聞こえ、驚いてその場所から逃げ出した僕。
思い出した、僕が来た時、彩夏さんは庭仕事の最中だった事を。
暑い中、タオルを首にかけて雑草を抜いていたところが記憶にある。
その記憶にも理由があった。僕は彩夏さんの胸元を見ていたから・・・
ラフな胸元の大きく開いたTシャツで、しゃがみ込んで作業をしていた。
膝で潰されたような胸、大きかった。やわらかそうで。

僕は帰ったその夜、ベッドに入り彩夏さんでオナニーしてしまった。
正直を言えば、過去にも数回彩夏さんでオナニーした事がある。
他のお母さんたちよりはカットの大胆な服も着るし、ラインのはっきりした物も着る。
それが似合っているのだからいやらしいものではないはずなのだが、
その形のまま盛り上がった胸、形のままのお尻、ずっと気になって仕方なかった。
でも、もう今までとは違う。
直接肌を見た、下着を見た。それも外したばかりであろうブラジャーの内側まで。
そして、褐色の胸元のその先にある谷間がクシャクシャになる程に潰れたバスト。
あの曇りガラスの先に見えていた彩夏さんのボディーラインのシルエット。
自分が恥ずかしい。親友のお母さんを想像したオナニーで大量に射精してしまった事。
浴室に入り込み全裸の彩夏さんに抱きつきキスをしている自分・・・
彩夏さんが嫌がった顔をしているのに、美しいバストを鷲掴みしている自分・・・
そんな場面を想像。僕は自分にため息をつき、そのまま眠りについた。


やがて彰人は留学の地カリフォルニアに向かった。
彰人の留学前・留学直後には頻繁に彩夏さんとも会っていたものの、
1か月・3か月と過ぎて行くほど連絡は少なくなり、一時は忘れたような時期も。
彰人も、そして僕自身の大学生活も始まったばかりだし、余裕が無かった事もある。
半年経った頃だろうか・・・  彰人からいつもと違う雰囲気のメールが届いた。
いつもは短い文章、そして言いたい事だけ淡々と単語を並べただけのようなメール。
それが今回は少し長文、それも内容が密で彰人らしくない。
要は“お願い事”のメールだったのだが。
彰人、留学してすぐに彼女が出来たと言っていたくせに、なんとアイドルの・・・
ラジオ番組の録音を頼んで来た。それも毎週毎週録音して送って欲しいと。
高校3年になってすぐぐらいから彰人は“三軒茶屋女学院”にハマり出した。
中でも中心メンバーの“TAE”の事が大好きで、いつもその話をするようになる。
それに吊られてしまい、僕もメンバーの“川原ユウミ”の事が好きになった。
川原ユウミは元PTCガールズの川原アイミの妹で、
僕はTAEより川原ユウミの方が断然カワイイと思っている。
いつもその事で言い合っていた事も、今は懐かしい。
彰人はネットでTAEの単独でのラジオ放送が始まる事を知り僕に。
今時ラジオなんてネットで海外でも聞けると思ったら、なんとローカル局、
関東ラジオという八王子にしか送信所のない放送局での番組。
確かに関東ラジオって名前だけは聞いた事があるが、AMなんて聴かないし、
それも新聞のラジオ欄に載っていないような小さな放送局の番組。
だけど・・・  僕の住む北三鷹では関東ラジオの放送が受信出来てしまった。

コツコツ・コツコツと30分番組・週一、一月分溜めては彩夏さんに届ける。
TAEのラジオを聴くだけならそれほど苦にならないが、それを録音するのが大変。
今時ラジオのイヤホン端子からPCのマイク端子で録音するなんてアナログ作業だ。
でも、そのひと月の苦労も彩夏さんに会える口実であるわけだから、何とか続いた。
「いつもごめんねぇ、彰人、彼女いるのに失礼よね?!(笑)
   貴裕(僕)君、川原ユウミって子が好きなんでしょ?! 聞いてるよ。
   どんな子なのか今度気にして見とくね。どんな好みなのか・・・  (笑)」
毎回食事を用意してくれるし、2時間以上お世話になる事もある。
でも、あの夏は忘れていない。忘れられないまま。
正直、テーブルをはさんで向かい合っていても、あの時の彩夏さんを想像している。
この家に近づく時、ベランダの洗濯物を見てしまう僕。
見掛けないセクシー下着ばかりだが、特にあの時見た紫のブラジャーを見たなら、
心臓がドキドキ振動するのがわかる。
失礼だと思いながらも、彩夏さんに会う前に既にあの時の事を片隅に置いたままだ。


一度、彰人のラジオ録音を届けた時、別の件で彩夏さんに頼み事をされた。
彩夏さんと彰人の住む家には使われていない部屋がある。
僕は既に彰人から理由を聞いていたが、
彩夏さんの別れた旦那さんの私物が残っているそうだ。
僕はその片付けと言うか、“何か使える物・欲しい物があったら持って行って”
そう言われ、その部屋を案内されたのだ。
アメリカ人男性の私物。もう彩夏さんと一緒になってからの物だし、
必要性・重要度がないから特に受け取りの必要が無かった物なのだろう。
沢山の荷物を想像したが、小物ばかり、そしてダンボール箱5箱程度の量。
「何か欲しいものがあったら遠慮しないで、ガラクタばかりだけど・・・
    ちょっとクリーニング屋さんに取りに行きたい物があるから、
    30分ぐらいいい?  ゆっくり見てて。 なるべく早く戻るから」
彩夏さんは僕をそのダンボールの部屋に残して、クリーニング屋さんへと出掛けた。

ガラクタなんて言ってたけど、珍しい小物や価値がありそうなオイルライター、
全て英語で書かれたハードカバーの本や洋物のCDもある。
そこに向かって箱の中を出していると、焦げ茶色の厚く重い物が出てきた。
フォトアルバムだ。僕は何気なくそれを引き出した・・・
少し色が違う、時代を感じるし、そこに写る人々の服装・髪型がそれを物語っている。
??? これは・・・
若き日の、別れた旦那さんと出逢った頃の彩夏さんだ!
まだ彰人が生まれる前なのかもしれない。
ロングヘアー、オーバーオールを着た彩夏さんが外人男性に寄り添っている。
この人が前の旦那さん、そして彰人のお父さんって事か・・・
幸せそうな二人、将来に疑いなどないような笑顔の二人なのに・・・
僕は今まで他人のアルバムになんて関心はなかったけど、今、大切に捲っている。
今度はスキー場か? 本当に幸せそうなカップルだ。
へぇ~ どこかのリゾートかなぁ? 高級ホテル?? プールまである・・・
?????
捲った次のページ、あの時の心臓のドキドキが蘇る。
真っ赤な水着の女性がプールでカメラを向き最高の笑顔を見せている。
ロングヘアーで黒い髪型のせいか、今よりもほっそりと見えるのに・・・
もの凄い角度でカットされた、ハイレグと呼ばれる腰まで切れ上がっている下半身。
そして・・・  上半身の鋭角な直線は臍にまで届きそうな程に下まで切れて。
何より、真っ黒に日焼けしたその全身、真っ白な健康的な歯、
そしてそんな刺激さえ吹き飛んでしまうような深い谷間を作っている胸。

僕は1ページに3枚入れ込んである写真を食い入るように見る。
アメリカ人男性が愛したアジア人女性。
アメリカに住む女性には驚くようなスタイルを持った女性も多いだろう。
でも、普通の背丈の日本人女性、それもほっそり見えるのにその胸が大きい。
この何枚もある水着姿の彩夏さんを撮った写真、撮り手が元の旦那さんなら、
きっと物凄く魅了されているのだろう、写真からそれが伝わる。
外国人女性の豊満ボディにない、質感のあるグラマーさが洗練されている。
彩夏さんはすべて笑顔で写っている。きっと元の旦那さんを最高に愛していたのだろう。
彰人は二人の愛を受けて生まれてきた。だから魅力的なヤツになっている。
離れても自分の父親を嫌っていないようだし。
あっという間に時間は過ぎてしまっていたようで、玄関の鍵の音で我に返った。
最高に美しく写った赤い水着の彩夏さん、僕は2枚はずし自分の中に。
それを持ち帰った僕は大切に自分の机の引き出しの中に入れた。一番奥へ。
フィギア・サッカー大会の記念メダル、そんな物より大切な宝物になった。
そして事あるごと、それを引き出しから取り出し彩夏さんを思いながら・・・


次の録音を届ける時がやって来た。
普通に渡し、いつものように御馳走になり、そして彩夏さんもいつもと変わらない。
そのまま時間が過ぎると思っていた、もう帰り際だった。
「ねぇ・・・  写真、 写真なんだけど・・・  何枚か知らない?」
突然そう彩夏さんに言われ、僕はきっと複雑な表情のまま止まってしまっていた。
彩夏さんは続ける、
「別にいいの、あれはいらないものだから・・・ 
    でもね、あの・・・ あそこにあったのって私の・・・  その・・・
    水着の写真だったんじゃないかって、違う? かな。 ・・・
    恥ずかしいんだよね、こんなおばさんの若い頃の写真。水着なんてさ(笑)」
目一杯僕に気を使ってくれているのも分かった。いつもの彩夏さんからすれば、
あんなに丁寧で回りくどい言い回しなどらしくない。
僕は彩夏さんにそんな気遣いをさせ、とても嫌な思いをさせたのかもしれない。
僕はスミマセンと謝った。そして、
「必ず今度お返しします!」と頭を下げた。
すると彩夏さんは申し訳なさそうに、
「いいのよ、いいの、あれは処分するものの中にあったんだし、
    私・・・  自由に持って行ってって言っちゃったよね?!  恥ずかしいね(笑)
    気にしないでほしい、貴裕君にはこれからも彰人の親友でいて欲しいし・・・」
そう言ってテーブルの上の食器を片付けていた。

「好きです・・・」
自分自身驚いた。自然に小さな声が出てしまった。
もちろん彩夏さんも驚いたようで、そこに立ち尽くしていた。
僕は自分を見失ったように、堰を切ったように余計な事を言ってしまう。
「すみません、今までも何回も彩夏さんの事をいやらしい目で見てしまいました。
    胸元とか、チラチラ見てしまったり、洗濯物を見てしまったり、
    前に僕が家に来た時に彩夏さんがシャワーを浴びていた時があって、
    もうそれ以来・・・  本当にごめんなさい、いやらしい事ばかり・・・
    本当にごめんなさい!!  ごめんなさい・・・ 」
深く頭を下げて謝った。
自分でもなんでそんな余計な事を言ってしまったのか、もう気が動転してしまって、
僕は頭を下げたまま泣いていたと思う。
彩夏さんが困っているのは伝わる。そして優しい。
「そんなつもりじゃないの、ごめんね。 私がいけないね。服装とかだらしないよね。
    年頃だもん、貴裕君は異常じゃないよ。私の方がいけなかったんだと思う。
    ねぇ、顔上げて。 私、自分が恥ずかしくなっちゃったよぉ~
    私なんておばさんだしさぁ、もう男性視線なんか無縁だと思ってたの。
    なんか本当に恥ずかしい。彰人と同じ年の子からそんな・・・
    喜ぶべきだよね?!  こんなおばさんに興味持ってもらえるなんて。
    それに貴裕君の事は大好きだし、本当にいい子だと思ってる。
    これからもずっと彰人の親友でいて欲しいし、本当に気にしないで欲しい!」
顔を上げた僕の前にいる彩夏さんは真っ赤な顔をしていて、
見た事もないほどに強張った表情をしている。今までに見た事のない彩夏さん・・・

僕がそこまで謝った事、そして大学生の男子が泣いた事がショックだったようだ。
彩夏さんは僕の立ち尽くす前で片付けをやめ、力尽きるように椅子に座り込んだ。
「私だめだなぁ・・・  そう言うことにもラフになれてたと思ってたんだけどなぁ~
    アメリカでの生活も長かったでしょ?!  ダンナもアメリカ人だしね。
    だけど、あんまり変わってないのかなぁ。昔の方が破天荒だったんだけど・・・
    やっぱりおばさんになったのかなぁ?  やだね、自分もおばさんかぁ・・・」
彩夏さんはテーブルの少し遠くを見たまま、僕を見ずに話を続ける。
「この前、貴裕君が帰った後ね、私、あのアルバムがこっちにあるの知らなかったのよ。
    でね、私も久しぶりに見たの、懐かしい写真ばかり。
    で、ずっと捲っているうちに今では恥ずかしくて体が熱くなるようなあの写真、
    あの水着の沢山張られたページまで進んで行ったの。そうしたら・・・
    色の変わった、真新しい写真を剥がした跡、恥ずかしかったのよ。
    いや、正直に言うね、ちょっと嫌だった。貴裕君が持って行ったなんて。
    ごめん、少しショックだった。でも思った、年頃の男の子なんだよね。
    あの水着の頃の私、そしてあの頃はまだ若かったあの人。
    今の貴裕君、あの頃のあの人とほとんど変わらない年齢なんだよねぇ~
    友達の母親とか知り合いだとか、そんなの関係ないよね、性的な対象。
    水着とか下着とかヌードとか、興味あるに決まってるもんね。
    考えたくないけど、彰人もきっと彼女としてるし、AVとか見てると思う。
    母親ってバカだよね、自分の子供だけはって、どっかで思ってる。
    そして子供の友達までそんな風に。自分、もっと今時のつもりだったんだけど・・・
    ・・・  何が出来るかなっ ・・・ 」

静かに話し終えた彩夏さんがゆっくりと立ち上がった。
まだ僕を見ていない。
1秒・2秒・3秒・・・
僕はわかっていなかった、彩夏さんはもうシャツのボタンを3つ外し終えていた。
僕を見ていないが僕の動きで気が付いたのだろう、
「そこにいて、ただじっとしてて欲しい。分からないよ・・・  こんな事しか・・・」
そう言って全てのボタンを外しシャツを脱いだ。
ピンクで豪華な刺繍の入った光る生地のセクシーなブラジャー姿。
彩夏さんは本当に美しいと思う。顔とかスタイルを越えて、人として憧れの人だ。
続いてジーンズ、ボタンを外しファスナーを下ろし、それも脱ぐ。
上下お揃い、自分の母親の下着なんかと違い、今でも大胆なカットのショーツが似合う。
ピンク下着の下、今でも薄い褐色系の肌は年齢に関係なくかっこいいと思う。
「こんなのでいいなら見せるよ。貴裕君に苦しい思いさせる程のものじゃない。
    もうおばさんになった恥ずかしいカラダ。あの水着の頃の私とは別人だよ・・・
    本当、死ぬほど恥ずかしい。こんな事ならダイエットぐらいしておけば・・・」
真っ赤な顔をしているのに、彩夏さんはそれでも僕の為に続けてくれている。

ブラジャー、そしてショーツを外し、それを椅子の座面に置いた。
変な隠し方、そんな恥ずかしいところは彩夏さんにはない。
陰部を手で隠すような立ち方はせず、手は自然に膝横に力を抜いて落ちている。
処理されているのか、とても陰部周辺もきれいだ。
着けていた下着の跡がしっかりと残ってしまっているものの、
大きさの為に下に下げてはいるが、しっかりと前に突き出したボリュームある乳房。
確かに写真の彩夏さんよりはふっくらしている、いや、あの頃がスリムだっただけだ。
でも、あのロングヘアーで黒髪の時より数段、今のライトブラウンのショートが似合う。
あの写真の頃の顔よりも今の顔の方が洗練された顔にも見える。
僕は近づいた。彩夏さんの真横に。
とても不自然、彩夏さんは前を向いたまま、僕はほぼその真横に立って・・・
近くで、僕は彩夏さんの胸を見ている。
普段下品に“上乳”なんて呼び方をしているその傾斜、その微妙な曲線が芸術品のよう。
僕は触れた、我慢できずに。
“ビッ”と一瞬仰け反るように肌を震わせたが、彩夏さんは黙って瞳を閉じた。
そして動かない。
僕に触れる事を許してくれると言うのか・・・
彩夏さんの乳房を優しく包むように触った。大きく、そしてやわらかい。
でも、何より、その大きさが僕の手の中に丁度いい感触で、
僕の中でずっと大人の女性・理想の女性・いい女の代表のような、
遥か遠い存在に感じていたのに、今、自分の手にフィットしたその感触はリアルをくれた。
「好きです!」 僕はそう言って彩夏さんに抱きついた。

自分のカラダを他人に自由にさせる事、なんて大きな人だろうか。
僕の為に脱いでカラダを晒し、そしてそれに触れさせ、そして・・・
その日が僕の初体験の日となった。
あまりに意外な展開・成り行きだった為に、特に後半は憶えていない。
僕の求めるまま応じてくれて、僕が道を見失えば誘導してくれた。
何をしてしまったのか、何をしてもらったのかもハッキリしないままの記憶。
「こんなつもりじゃなかったのに・・・  あぁ~ どうしよう・・・」
彩夏さんは終わった後にベッドで泣き出し、なかなか起き上がる事が出来なかった。
それほどの覚悟を持って僕の為に・・・
そして、色々な意味で彩夏さんとの距離が急激に近づいたその日。
自分とは無縁に思うほど遠くに憧れていた彩夏さん。
でも、日本人女性そのもののようなところがあるのかもしれない。
自分の息子の親友とそんな事になってしまった事、むしろそれより、
“僕を巻き込んでしまった事”と、そんな後悔の仕方をしていた優しく繊細な人。


次の月には録音を届けるだけ、彩夏さんはずっと懺悔のような気持ちのままのようだし、
僕は恥ずかしい事だが、“我慢の日々”を一日一日増やしていた・・・
でも、その次の月、僕は彩夏さんを強引に押し倒し自分の物にしてしまった。
彩夏さんは必死で抵抗した、僕はレイプしたんだ。
強引にされながら反省する彩夏さん、僕はただ必死で愛する事しかできず・・・
そんな時間を数ヶ月、彩夏さんと僕は続けた。
一時は本当に僕の彼女のようになってくれ、全てを教えてくれた彩夏さん。
でも、それでも湧き上がる不安は少しずつ育ち、彩夏さんの固い覚悟で関係は終わった。
その事、そしてTAEのラジオ放送も終了し、あの家に通う口実さえ無くした。
彩夏さん、固い決意が態度に出ていたし、苦しみながらも僕に素敵な時間をくれた彩夏さん、
僕はそれに従うしかなかった。
気が付けばその寂しさの反動で出来た彼女との時間に追われ、そして就職、
いつしかあれだけの経験・時間を頭の片隅に忘れるようになっていた。


会社の最寄りの駅に電車が滑り込んだ頃、
僕はさっきの「久しぶりだね?!」と微笑んだ彩夏さんを浮かべていた。
扉が開きいつものホームに降りる。
数十分ではあまりに内容が濃過ぎる記憶。
そんなに大きな記憶をすっかり仕舞い込んでいた自分にもため息が出る。
会社はそれほど忙しくない。あの直後に付き合った彼女とは早々に別れ、
今は別の女性と付き合っている。前の彼女には申し訳ない、
大きい物を引き摺ったままだった、勘弁してほしい。
今の彼女は付き合い方が上手く恋愛をコントロールできるタイプの人。
優等生で安定感があり安心できる。だけど、ちょこちょこと小さい隙間が出来る。
今日、しばらく忘れていた彩夏さんと再会してしまった。
女性は終わった事を追わない。それは知っているつもりだ。
だから我慢する、彩夏さんに再び言い寄るような事はしない。
けれど・・・
断片的に出来ている小さな隙間、自由な空間、きっとあの頃の記憶を使ってしまう。
彩夏さんに初めて出会った頃のインパクト、そして気になり出してからの眩しさ。
あの強烈な衝撃を与えられた夏、さらに水着の写真を目にしたあの日。
そして・・・  僕の為に脱いでくれたあの運命の時。


琥珀色。
何故か琥珀色という言葉、それが耳に入る度に彩夏さんとのあの頃の想い出が・・・
でも、髪の色・肌の色・雰囲気、どれがそれに結び付くのかを説明出来ない。
茶色とか褐色とか、彩夏さんのこれが“琥珀色”だなんてものは浮かばない。
それでも“琥珀色”という言葉を聞く度に必ず彩夏さんとの記憶が登場してしまうのだ。
今付き合っている彼女は素敵な人だ。出来ればこのままゴールできたらと勝手に。
なのに、彼女は勿論だし、仮にさらに刺激的な誰かと付き合ったとしても、
もうあの時の彩夏さんとの記憶を塗り替える事は無いと思う。
それを思うと「久しぶりだね?!」の清々しさは少し寂しい。
彩夏さんの心の中は分からない、でも、男は女々しいものだと思う。


今度久しぶりに彰人と飲む事になった。
まだ仕事も始まったばかりと言うのに、彰人は今の彼女と結婚を考えている。
彰人が結婚するとして、僕はその結婚式にどんな顔で行くのだろうか。
親族のテーブルに座る彩夏さんに、“おめでとうございます!”と言うのだろうか。
もちろん彰人も彰人のお嫁さんとなる人も、僕と彩夏さんの関係は知らないわけだし、
今日の彩夏さんを見ていれば向こうに心配など感じられない。
僕は・・・  複雑かもしれない。
短い期間でも本気で好きだった。僕の初めての人であり、特異な経験に違いない。
それに・・・
今もあの写真は机の奥に大切に保管されたままなんだ。
忘れていた時期もあったが、何度かある思い出した時も捨てられなかった。
愛する人が変わり、この人とずっと一緒にいたいと思いながらも捨てられないまま。
自分の人生の中で、クラスメイト・先生・アイドル・女優・セクシー女優、
その時期その時期にセックスシンボルはいたが、あの水着写真以降、
もう永久クイーン確定になってしまった。
もう誰も、あの20代・あの水着姿の彩夏さんを越えて行く事はない。
あの写真には前後の大きな付加価値まで付いてしまっているのだから。
何回か言われた事がある、
「誰か思っている人がいるの?」とセックスの最中にだ。
否定すれば、“う~ ん・・・”と静かに何もなかったように時は過ぎるのだが。
申し訳ないと思っている、そんなまま隣にいてくれるのだから。



踏み込んだ自分を後悔しそうになる。
あれ以上の“想い”を、もう見つける自信がないから。
時々真剣に、“彩夏さんは独身なのだから・・・ (結婚の事)”と考える時がある。
でも、それをやったなら親友も友人も全て失う事になるだろう。

“琥珀色”
僕はその言葉が連想させる記憶から抜け出せない限り・・・
彩夏さん、そして彰人のように海外に出たなら、もっと違う価値観を持てるだろうか。



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