「家族のある風景」
派遣の仕事は味気ない。
素っ気ない職場の人間関係に我慢して仕事終わり、
コンビニで酒や弁当を買って、給料に比例しない高い借り部屋に帰るだけ。
何ヶ月いるのか、最大でも2.3年しかここにはいない。
今時1ドアの冷蔵庫、そして小さいテレビ、フローリングに借り物の布団。
かわいいテーブルと何もないキッチン・ユニットバス。
玄関に備え付けの下駄箱には、サンダルを含めて3足しか入っていない。
俺が入っているこの部屋はまだまだ新築の匂いが残る綺麗な部屋だ。
きっと喜ぶべきなのだろうが・・・
一番近いローカル線の鉄道駅までは自転車で30分はかかる。
仕事先の工場には自転車で15分。周辺には畑や倉庫、小さい工場があるだけ。
コンビニに寄って帰ると7分ぐらい大回りになるけど、そこしかない。
隣も自営業の工場で、もう片方は建設業者の社宅。
玄関側の向かいは数件の民家で、部屋の窓、その目の前には畑が広がっている。
時間だけはキッチリ終わって帰ったところで、夜が長過ぎる。
休憩時間に逃げ道になっているスマホはバッテリーの減りが早く、
今までそれほど見なかったテレビを見る様になった。小さい画面で。
腹は減るからすぐ食事しちゃうけど、風呂もシャワーだけ。
何をやってもあっと言う間に終わってしまい、時間だけが無限にある。
酒は好きだけど、毎日好きなだけ飲めるような稼ぎはない。
缶ビールが買えなくて安い焼酎を買っていた。でも氷も割る物も何もないし・・・
いつしか自分から飲んだ事などなかった日本酒を飲むようになっていた。
いちばん大きく量があって、そして一番安いやつ。
つまみは柿の種を少しずつ。それだけ。
職場の人間関係が苦痛で、生活も乾ききって、もう辞める事ばかり考えていた。
ついているテレビにも興味がなくなり、飲む酒も無かったその日、
俺は窓を開け夜の景色を見てた。田舎だけあって空がきれいで、星がよく見える。
前が畑だから遠くの方までなんの障害もなく、
ちょうど一番端の俺の部屋からは斜め奥の方向にある大きな民家の明かりが見えた。
2階の部屋にある人影は若い女の子のように見えるが、小さくて分からない。
その下にある一番右の窓は格子が付いて風呂場に見えるけど、これも小さくて見えない。
俺は考えていた・・・
本当に明かりと人影しか見えない。これは向こう側からもそうだろう。
だからカーテンも閉まっていないし。と言う事は・・・
こちら側が“努力”をすれば、そこには何かが見えるかもしれないという事。
もちろんその先に綺麗な景色があるとは限らないが。
俺は次の日の作業中もその事を考えていた。スマホで色々とツールを検索していた。
望遠鏡・双眼鏡・ビデオカメラ・・・
でも、どれも高い。今の俺に手が出るような金額の物がない。
唯一、少し子供だましな感じのオペラグラスが狙えそうだった。
今日が最終金曜日だった事もあり、俺は終業後に自転車で1時間半かけて街に向かった。
トホホな街。
このあたりでは一番大きいターミナル駅なのだが、やはり田舎のローカル線。
駅前も閑散としている。商店街風のところも数件の飲食店が点在しているだけ。
カメラ屋も時計屋も金曜7時前だと言うのに閉まっているし・・・
そう言えば確か、少し離れたところにショッピングセンターがあったはず。
俺はさらに国道方向に向かって20分ほど自転車で走った。
予想通り寂しいショッピングセンターだが、田舎らしく色々な小さい店が入っている。
食品コーナー以外にも雑貨コーナーもあり、少量ながら家電の類もある。
色々回って、やっとサービスカウンター近くの時計などの入ったショーケース横に、
棚に掛かったオペラグラスを見つけた。
見た目がショボイ事は勿論だが、その割に2980円もする。
迷ったけど、プラスチックの外回りの割には覗き込んだ視界が意外に良く、
俺はそのオペラグラスを購入した。
そして2時間近いドライブの末、9時半頃にマイホームに到着。
コンビニに寄る事さえ忘れていて、食事はカップラーメンになった。
待ち切れずにお湯を注いで待つ間に箱から出し、カーテン・窓を開けて覗いた。
なかなか焦点が定まらず、なんの景色も映らない為、
“やっちゃった・・・ 無駄な買い物しちゃった”と落胆しかけた。が・・・
ダイヤルで調整しているうちに焦点が定まった。
それがなんと、恐ろしい程に近く見える。怖くなって肉眼に切り替えたぐらいだ。
確かに肉眼だと遥か遠くに見える。そしてまた覗き込むと・・・
椅子に座って勉強しているのか、若い女性がしっかり見える。
さすがに顔がしっかり見えるとは行かないけど、それでも雰囲気は伝わる。
明るければもっとしっかり見えるのかもしれない。
俺は突然畑の奥を走っていた車のライトに驚いた。
そうだ、俺の部屋は明るいから、俺が覗いている姿が外に見えてしまう・・・
俺はすぐに電気を消した。
かえって視界が良くなった。さっき黒っぽく見えた女の子の輪郭がやや見やすくなった。
美人っていう感じはしないが、まぁ大学生ぐらいの若い子に見える。
短めの髪で、上の方をピンでとめているのも分かる。
トレーナーのような物を着ているが、色は少しぼやけ、まぁ紺系の色だ。
そんな事をしていたら、もうラーメンには汁がなくなっていた。
その日はもう風呂場らしき場所の電気はつかなかったし、早めにカーテンが閉まった。
ただ、彼女の隣の部屋も女性である事がわかり、しかも女子高生っぽい。
制服が掛かっていて、さっき見たお姉さんであろう女の子がやや太めなのに対し、
妹らしきその女性は細く、とっても清楚な感じの頭の良さそうな女の子だった。
テレビをまったくつけない日なんて久しぶりだったかもしれない。
土曜日、俺は余計な出費もあって気が引けたけど、今夜の為に追加の酒を買った。
洗濯や用事は明るいうちに済ませ、その時を待った。
さすがに明るいうちはこちら側が見える心配があるので我慢した。
暗い部屋のまま外が暗くなるのを待って、やっとカーテンを少し開いてみた。
肉眼で風呂場であろう場所の明かりが確認できる。
俺は焦ってオペラグラスを覗き込んだ。
風呂の中が見えた、そして裸・・・
しかし男性だった。きっと父親だろう。でも、希望が見えたわけだ。
つまり、理論上は中の人間の裸が見えるわけだと確認できたわけだから。
でも思った、中年男性ならともかく若い女の子は開けたまま入らないだとうと。
俺は酒とつまみを用意していた、“父親”が入っているうちに・・・と。
柿の種を皿に広げ、酒をコップに注いでまだ父親が入っているのかを確認しようとした。
俺は驚いた。そこに女性が入って来たのだ。
昨日見た二人とは違う。おそらく母親なのだが、見た目が若い。
大学・高校生の母親だから40代半ば以上なのだろうが、若く見える。
どちらかと言えば痩せ型で、胸もほとんどない体型だった。
せっかく見えた全裸ヌードだが、ニコニコ笑いながら入っていて健康的過ぎるし、
少し自分の好みとは違った感じがして、夢中にはならなかった。
後はあの二人が窓を開けたまま入ってくれるのかどうかだが・・・
2階の部屋の電気が付いた。お姉ちゃんの方。
今頃帰宅したのか、肩掛けのカバンを机の上に置いた。すると・・・
一気に窓側に立ったまま上のトレーナーのような物を脱いだ。
予想通りだ! 大きい。少し太めのその体型の期待を裏切らない、いやそれ以上、
大きな胸をその中にしまっていた。続けてズボンも脱いだ。
上下とも地味な下着だが、その肉感的な体型は俺の好みどストライク。
ただ着替えが物凄く早くて、あっと言う間に違う洋服に着替えてしまった。
すぐに電気を消して部屋から消えたので、下の部屋に行ったのかもしれない。
それが入浴準備である事を願っていた。
両親が風呂から出たのか、一度風呂場付近の電気は消えた。
でも、ほんの数分、再び電気はついた。今度は・・・
妹だ、奥の方で着替えているのがチラチラ見える。
やはり痩せている。それにいかにも優等生の様な年齢にして幼く見える体だ。
きっと近くで見たなら、透き通るような綺麗な胸をしているのかもしれない。
そっち系の男性なら泣いて喜びそうな体だと思う。
風呂に入って来た。本当に真面目そうな良い子かもしれない。
俺は所々で眺めながら酒をすすめていた。
本命はやはりあのお姉ちゃんの方だ。あの体なら期待できる。
せっかく見せてくれた母親と妹には申し訳ないが、あなたたちは前座だ。
順番までそうなっている。
しかし・・・
妹が出てから待てど暮らせど一向に電気が付かない。暗いままだ。
“きっと食事をしている”
自分にそう言い聞かせながら、俺の酒はすすんだ。
少し酔いも回って来た頃だと思う、突然風呂場の明かりがついた。
彼女だ! お姉さんがやって来た。
さっきの逆の順番で脱ぎ始めた。今度は横から見せてくれているけど、予想通りだ。
その体なら美人でなくても全く問題ない。
ブラを外した時に溢れ出るその感じ、それを期待していた。
その適度な下腹部の膨らみも良い方向に俺を刺激する。
大きな胸を見せながら風呂に入って来た。大きいけど若いだけあって綺麗にツンとしてる。
ただ・・・
ガラスを半分以上閉めてしまった。シルエット+時々見えるだけになった。
それでももう俺は興奮している。
片手は自分のズボンの中に入っていた。
それからの日々、俺はその家族の景色に夢中になった。
勿論お目当てはお姉さんだが、家族を見ていると人間関係が見えて来る。
無音の風景の中に人間そのものが伝わって来る。
基本的にあの家はカーテンもガラスも気にしていない。
一度あの家の近くに行き、あちらから見える景色を確認した事がある。
基本、視界は一面の畑で、遥か遠くに俺の住むアパートや倉庫などが見える感じ。
安心して無防備になるのも分かる気がする。
それに日中、俺がカーテンから覗いてもあの家からはそれが分からない。
まぁ、途中の道を行き来する人の視線を俺の方が気にする必要はあるが・・・
仕事から帰れば真っ先に窓側に向かう。食事も洗濯もお姉さんの動き次第だ。
俺のプライベートは彼女中心に回っている。
何だか恋してしまった。ずいぶん年下であろう彼女に。
美人である必要はない。あれだけ素晴らしい体を着替えて見せて裸で見せて・・・
今日はどんな下着をつけるのか、髪の束ね方が違ったり。
風呂で腋の手入れを見せてくれたり、生理の時には装着と処理を見せてくれて。
最近気が付いた。部屋で本を読んでいる時に、
机で、ベッドで、君は片方の手をズボンの中に入れている時がある。
虚ろな表情のままページを捲り、そして閉じてしまって胸元を触ったり・・・
ついに見せてくれた。
ベッドに倒れ込んだ君は本を横に置いて仰向けになった。
片方の腕はその大きな胸を掴み、もう片方はズボンの中に。
そしてやがて胸元を露出させ、そしてズボンの中に入れた腕は大きく動いて・・・
仰け反って歪めた顔を僕の方に見せてくれる。足はつま先までピンと伸ばして。
激しく尽きた後君は数秒静かに浸り、起き上がって本をしまう。
どんな本を読んでいるの?
その頃には俺も尽きている。少し遅れて君を見届けてから・・・
俺は寂しい男だ。こんな生活、そして本を相手に尽きている彼女で尽きている。
いつか重なってみたい、彼女と。
派遣社員にはあんなマイホーム家族に通じる道はない。それが現実か・・・
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