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「想い出に恋をして」





想い出は自分の子供の頃の、そう、少年だった頃の話で・・・


公園で友だちと遊んでいる時だと思う。
自分が高いところにいて、公園の外の通りを眺めていたのかもしれない。
左の方から彼女は歩いて来た。
目が合って、きっと少しだけ睨む様な不思議な表情で俺を見てた。
俺も気になっていた。そんな事を彼女に言った事はないと思うけど。

まだ6年生だった俺。そして2学年下だから、君は4年生か・・・
今でもその風景だけが鮮明に残っている。
落ち着いてるんだよねぇ・・・
俺よりも二つ下のくせに、基本おっとりしている性格だと思うんだけど、
でも、何か言ってもからかっても、君は呆れ顔で“はいはい!”な感じで。
悪戯もしたかもしれないけど、いつも半怒りの表情の様でいて心地いい。
不思議な子だった。

たまに擦れ違う様に会うだけの関係なのに、名前をフルネームで知っていた。
まだ6年生の俺が、正確な漢字で覚えている人間なんてそうはいないのに・・・
少し大柄で、太ってはいなかったけど丸い、とにかく優しいイメージ。
怒り顔なイメージなのに、優しさばかり伝わっていた。
本当に不思議な子で、俺にとって不思議な存在。
知り合いになったきっかけも思い出せないし、どんな会話をしたのかも。
年上には何人かお姉さん的な女の子の知り合いもいたけれど、
年下の女の子の知り合いは君だけだった。何故?
本当に自然な空間を作ってくれて。
まったく仲良くなんかないのに、会話なんて少ないのに、なんか近くて・・・
本当に不思議な子。異性が近くにいてあんなに居心地がいいなんて。

いつも通りの向こう側にいる君を見つけてしまう。
君も見つけてくれた。そして少し怒ったような呆れたような顔で少しだけ笑うんだ。
でも、自分の近くや隣にいる時の君は妙に優しい表情ばかりで・・・

君は俺の記憶の中の変な場所にいる。たった一人、オンリーワンの存在として。
妹が欲しかったのかなぁ・・・
でも、あんな怒り顔で笑う妹なんて(笑)

あの時期だけよく会った記憶があるけど、その後はめっきり会わなくなったね。
久しぶりに見た時、君はセーラー服になっていて・・・
すごく背が高くなった気がしたし、少し綺麗になった?
大人っぽくなったくせに、あれから何年も経っていると言うのにまた同じ表情をして。
少しだけ顔を赤くした様に見えた。俺もそうだったと思うけど。

きっと君みたいな女性が自分の理想なのかもしれない。
長い月日、まったく気付く事さえ無かったけれど・・・
ずっと変わらずに立体的で温もりのある気持ちを抱えていたけれど、
“好き”って事に気が付かなかった。俺は子供だった。
子供だった君は素敵な人だったのにね。
目が大きくてとてもキレイな肌をしていたね。
最後に見た頃にはメガネをしてた?

想い出してよかった。
忘れたくない想い出、それも特別も激しさもないけれど、
きっと真綿のような心地良さ溢れた最高の想い出なんだ。
素敵なお母さんになってる?!
それともシワいっぱいの怖いお母さんになってる??
もうまったく違う道を進んだ俺たちだから、きっと遠くにいるのだろう。
仮にスーパーで隣にいても気付かないね。


あの頃の君に感謝して。
不思議な人だよ、君は・・・





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